【餃子定食】ジャンボ餃子には肉餡と夢が詰まっている:パリッコ『今週のハマりメシ』第35回
ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。 【画像】「青山餃子房」のジャンボな餃子 それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。 そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。 * * * 我が家から2番めに近い駅、西武池袋線の大泉学園駅前まで買い物に出てきた昼下がり。ついでにどこかで昼食を食べて帰ろうとうろうろしていると、「青山餃子房」という新しい店ができているのを見つけた。 ひさしに「大泉学園店」とあるからチェーン店だろうし、そもそも僕は新しい店よりも、いわゆる"町中華"と呼ばれるような店の、古い味わいのほうをより好むタイプ。失礼ながら特に惹かれるポイントはなく、ただなんとなく店の前を通り過ぎようとした。 が、店頭にホッピーのポスターが貼ってあるのに気がつき、条件反射的に「いいな!」と思ってしまう。6月とはいえもはや夏のように暑い日で、ちょうど午前中締め切りの原稿があり、早朝からとりかかって終わらせてきたところだった。だからよけいに、「おつかれ昼ホッピー、いいな!」と。 そして次の瞬間に、とどめを刺された。店頭に並ぶ持ち帰り惣菜のなかに、店の看板メニューであろう餃子が並んでいて、それがなかなかにジャンボなのだ。僕はどうもこの「ジャンボな餃子」というものに対し、幻想にも近いあこがれを抱いている節がある。池袋の「開楽」や、銀座の「天龍」や、上石神井の「一圓」など、特に「あそこの餃子、好きなだなぁ」と思う店の餃子は、総じてでかい。それらの店で食べた餃子がうまかったから執着するようになったのか、それともその逆かは、まさに「卵が先か鶏が先か」といった感じで、自分にもわからないのだけど。とにかく僕にとって、ジャンボ餃子には、肉餡だけじゃなく「夢」もまた詰まっているというわけなのだ。 すっかり青山餃子房気分になり入店してみると、まだ常連客がそれほどついていないのか、真新しい店内には、幸せそうに昼飲みを楽しむカップルがひと組のみ。僕もさっそくホッピーセットを頼み、同時にメニューを検討してゆく。 定食も単品料理も全体的にかなりリーズナブルで、特に、どれも税込み209円の「前菜」コーナーの充実ぶりが嬉しい。お目当ての「餃子定食」は頼むとして、それが出てくるまでの間、好物の「ピータン豆腐」でもつまんで待つことにしようっと。 さっそく届いた、ナカ濃いめのホッピーをぐびり。いや~、効くな。ひと仕事終えたあとの昼酒、たまらん! すぐにピータン豆腐も到着。とても200円ほどとは思えないボリュームで、黒酢醤油ダレの絡む豆腐と、まったりとしたピータンのハーモニーにうっとりする。珍しくたっぷりと添えられたレタスもいいな~! と、すでに幸せの絶頂といった感じで悦に入っていると、やがて餃子定食もやってきた。