脳や体に悪影響! 砂糖依存症について専門家にきいた
シュガーラッシュ、シュガーハイ、シュガースランプ……。スイーツを食べ過ぎたときの脳の状態を表すこれらの言葉を、誰もが聞いたことがあるはず。 とはいえ、脳に糖が必要なのはまぎれもない事実。脳もほかの細胞も、グルコースがエネルギー源。砂糖は優れたエネルギー源なので、人は進化の過程で甘いものを好むようプログラムされてきたという。 たとえば低血糖症や食べてから少し時間がたって血中の糖分が少なくなると、頭がぼんやりしたり、言葉が出てこなかったり、スマホの置き場所を忘れたり、仮眠したくなってしまうもの。 けれど砂糖は摂りすぎても、体や脳に悪影響となる可能性があるのだ。
砂糖を食べると脳で何が起こる?
「砂糖が舌に触れると、特定の味蕾(みらい)が刺激され、大脳皮質をはじめとした脳へシグナルを送ります」と語るのは、マウントサイナイ医科大学の助教授で、砂糖依存症に関する本の著者であるニコール・アヴェーナ博士。 このシグナルが脳の報酬系を活性化させ、ドーパミンという快楽物質が放出されて行動が強化され、その結果より砂糖を欲しがるようになるのだ。 砂糖はドーパミンを分泌する物質のなかで珍しい存在だと、アヴェーナ博士は言う。 「新しくておいしいものを食べた場合、通常ドーパミンは初めてそれを食べた時に分泌されます。これは食中毒に備えて、新しくて異なる味に注意をするよう、進化の過程で取得したメリットです。新しいものを食べて食中毒にならなければ、次回以降ドーパミンの反応はなくなります。つまり基本的に、ドーパミンは初めて新しいものを食べた時に分泌されるのです」 「しかし砂糖はそうではありません。ドラッグの乱用と同じように、摂取するたびに毎回ドーパミンが放出されるのです。大量の砂糖を摂取すると、ほかの食べ物と違ってドーパミン量が調節されないため、報酬系が働き続けて快感が続きます。こうしてドラッグのように、砂糖依存症が起こるのです」
脳に過剰な糖分があるとどうなる?
昔と違って、現代の食生活は砂糖だらけ。ドーナッツや甘さたっぷりのラテのように、目に見えて砂糖がたっぷりのものだけでなく、ケチャップやドレッシング、マリナーラソースに至るまで、砂糖が潜んでいる。 しかし脳は大昔のまま、砂糖が貴重な存在だと考えている。脳の報酬系は何度も使われると順応して強化され、依存も強くなる。ある研究結果によると、砂糖の多いエサを与えられたラットは、食べ過ぎを止める化学物質の分泌が減り、食べるのをやめる機能が低下したという。 また、これらの糖分を摂りすぎたラットは記憶テストのスコアも低く、前頭前野と海馬(記憶の形成と保持に重要な部位)の機能が損なわれていた。短期記憶にも関連のあるこの領域において、砂糖がたっぷりのエサが炎症を増加させたという、そのほかの研究もある。