<大阪北部地震から1年>「助けられる人から助ける人へ」体験施設で学ぶ防災の知恵とは
<大阪北部地震から1年>「助けられる人から助ける人へ」大阪の体験施設で学ぶ防災の知恵
最大震度6弱の揺れを観測した「大阪北部地震」の発生から18日で丸1年を迎える。関連死を含め6人の尊い命が犠牲となり、交通機関もマヒし多くの帰宅困難者が出て混乱するなど防災への課題も浮きぼりとなった。そんな中、今年4月に展示内容を最新の技術を用いて一新したという、市民が地震への備えや災害時の対応などを体験して学ぶ施設「大阪市立阿倍野防災センター」(愛称・あべのタスカル、同阿倍野区)では、「助けられる人から助ける人へ」と一歩踏み込んだ共助の姿勢がインパクトを放つ。関係者は「自助から共助へ、必要な防災の知恵や技術を学んでほしい」と話す。 【映像】大阪北部地震の当日、あべのタスカル近くの天王寺駅付近は人でごった返していた
力を合わせ、ガレキから人を救い出す体験学習
「大丈夫ですか!」「がんばれがんばれ、もう少しです」 励ましの声が飛び交う。防災体験学習の一環で、地震発生直後、救急隊が到着する前に、ガレキの下敷きになって救助を待つ人を発見した場合を想定。参加者3人が協力して、バールやジャッキでガレキの間にすき間を広げ、要救助者に見立てた等身大の人形を救い出す訓練だ。 現場で結成された臨時のチームだったが、要救助者を励ましながら無事救い出すことができた。救助活動中の2次被害を防ぐため、すき間に角材などをはめ込んで空間を確保する大切さが係員から伝えられ、熱心な質問も相次いだ。 あべのタスカルは地震への備えや災害時の対応などを体験して学ぶ体験型防災学習施設。 参加者はシミュレーション映像や大型スクリーンで、南海トラフ巨大地震や上町断層帯地震などが発生した際の大阪市内の想定被害を把握。激しい揺れや津波による被害の深刻さと向き合ったうえで、防災の知恵を各種体験学習で身につけていく。 救助体験とともに、消火や煙中避難、救護体験などが組み込まれ、震度7体験コーナーでは、過去の巨大地震の他、震度6弱以上と想定されている南海トラフ巨大地震の揺れも体で感じることができる。
「まさか津波が」の「まさか」が怖い
ドラマ構成による南海トラフ巨大地震の被災映像が、やや衝撃的だ。津波が大阪市内を襲う。ある家族は高台に避難した少女を除いて、車で避難しようとした母親と祖母は渋滞で津波にのみこまれ、父親と幼い弟は避難先から歩いて自宅へ帰る途中、津波の犠牲となる。 両親ともに津波に対する認識が甘かったことを悔やむが、すでに遅い。同センターでは市民の防災意識を喚起するため、厳しい内容を盛り込んだという。 大阪市住吉区在住の40代女性は「ドラマの中の大人たちはまさか大阪に津波が来るなんてと軽く考えていましたが、そのまさかが怖い。私も反省しなければ」と、ドラマから貴重な教訓を引き出す。 「わが家ではまだ防災用品をそろえていません。どんなふうに防災に取り組んでいくか、家族みんなで来館して相談しながら進めていきたい」と話していた。