【熱々のクロスオーバー】フォード・プーマSTへ試乗 200psに6速MT クワイフ製LSD
0-100km/h加速はフォーカスRS並み
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース) translation:Kenji Nakajima(中嶋健治) コンパクト・クロスオーバーのフォード・プーマに、STバージョンが追加された。昨今のSUVブームを好まないドライバーでも、その仕上がりに思わず興奮してしまうかもしれない。 【写真】フォード・プーマ 競合SUVモデル (174枚) 確かにハッチバックより車高は高く、視覚的な興奮度は薄い。見た目はいったん置いておいて、プーマSTの技術的なスペックに注目してみてほしい。 全長4.2mの5ドア・ハッチバックのボディに、200psのエンジンを搭載し、6速MTが組み合わされている。前輪駆動で、オプションとしてクワイフ社製のヘリカル式LSDを組むことができる。 採用するメカニズムを見ると、多段ATと四輪駆動を搭載する、同じセグメントのパフォーマンス・クロスオーバーとは一線を画すことは明らか。車重も充分に軽く、2001年のフォーカスRSに遠くない。 2020年のクルマとして、ボディサイズはオールドタイマーより若干大きい。車重も50kgほど重く、パワーも劣る。それでもトルクは太く、かつてのフォーカスRSが残した0-100km/h加速6.7秒という数字に、並ぶ加速を披露してくれる。 プーマはクロスオーバーとして比較的小さなボディを備える。荷室のフロア下には深いメガボックスと呼ばれる空間を利用できるが、リアシートの広さは大人向きというより、育ち盛りの子供向き。若いファミリー層向けのクルマだ。 クロスオーバーとして、プーマは車高が持ち上げてあるが、パフォーマンス・モデルとしてSTでは若干落とされている。フィエスタSTのステップアップ・モデルとしてみることもできるだろう。
フィエスタSTのシートに日立製ダンパー
フロントシートはサイドサポートが高く、フィエスタSTに採用されているものと同じ。身長の高いドライバーにはありがたいことに、ヘッドレストは別体。近年のハッチバックのシートは、背もたれと一体になっていることが多い。 着座位置は高すぎるということもなく、丁度いい。座面を一番下に下げれば、標準的なハッチバックに近い視線で運転できる。 プーマの車内空間は広々としていて、フロントシート側では肘周りも足元にも余裕がある。グラスエリアは比較的狭く、ルーフラインが高いわけでもなく、クロスオーバーという感覚は弱い。 プーマSTで走り出してみる。オンロードでは、スポーティながら硬すぎることはなく、乗り心地にギクシャク感が少ない。それでいて感心するほどの活発さがあり、やる気に溢れることが伝わってくる。小さなクロスオーバーに期待する以上だ。 足元を支えるのは、フィエスタSTを起源とするサスペンション。大径ホイールと、硬く長いスプリングが組み合わされている。アンチロールバーは、フィエスタSTより確実にねじれにくい。 リア・サスペンションはトーションビーム式のまま。ダンパーは、日立製ツインチューブ式の減衰力可変ダンパーを採用する。