9年間不登校ののち、東京藝術大学へ。27歳の作曲家・ 内田拓海さん「小・中学校に1日も登校しなかった私は、音楽に居場所を見つけた」
『不登校クエスト』その先に
■パーソナリティを出して活動したい ――11月で27歳。これからどんなことにチャレンジしていきたいですか? 内田さん:現在、修士課程2年ですが、この10月から1年間休学しています。キャリアをじっくり考えているからです。 10月には作曲家として福岡県のAIR(Artist In Residence)事業にも参加させていただきました。さらに、不登校の子どもたちや、若くして現代音楽や現代アートに興味を持ち始めた未来のアーティストたちに、もっと自分の活動を届けられる機会を作りたいですね。そして、出版もその一環ですが、作曲という枠にとらわれず、自分のパーソナリティを表に出していろいろな形で発信を続けていきたいです。 ■今を悲観的に捉えないで ――不登校で悩んでいるみなさんにメッセージをお願いします。 内田さん:親御さんは相当、不安に思っていらっしゃると思います。お子さんが不登校になった理由はそれぞれですが、私がそうだったように、もし学校に行くことがお子さんにとって良い選択なのであれば、時が来れば自然とそうなるでしょうし、行かなくても多様な学び方があると思います。正解がない分、親としては本当に大変だと思いますが、その子を信頼して向き合い、オーダーメイドの接し方をしてあげてほしいと思います。 そして、不登校で未来を心配しているみなさん。大丈夫です。誰でも無限の可能性があります。学校に行っていない分、実はすごく自由な時間がある。もし現状を悲観的に捉えているなら、それをチャンスに変えられるんです。1日5分でもいい。自分が好きなことや興味があること、あるいは何も見つからなくても、それがどこにあるのかを考えてみませんか。きっと、自分の居場所につながるヒントになりますよ! 【お話を伺ったのは】 内田拓海|作曲家・アーティスト 1997年生まれ。神奈川県藤沢市出身。作曲家・アーティスト。 東京藝術大学大学院美術研究科グローバルアートプラクティス専攻在学中。6歳の時、「自分は学校へは行かない!」と宣言し、小・中学校の9年間をホームスクーラーとして過ごす。通信制県立高校に進学後、一念発起。音楽経験がほぼゼロの状態からピアノと作曲の勉強を始め、2浪の末、東京藝術大学音楽学部作曲科へ進学。自身が不登校で過ごした経験から、鑑賞者にとっての〝居場所〟となれるアートの探求、創作活動を行っている。受賞歴として、奏楽堂日本歌曲コンクール第29回作曲部門第三位、東京藝大アートフェス2023・東京藝術大学長賞など。2024年10月2日に「不登校クエスト」(飛鳥新社)を発売。
取材・文/黒澤真紀 写真/五十嵐美弥