名護発展へ独自施策 辺野古対応で温度差 立候補者・紙上座談会
[名護市長選 2022・1・23] 【名護市長選取材班】沖縄タイムスは23日投開票の名護市長選に立候補している新人で前名護市議の岸本洋平氏(49)=立民、共産、社民、社大、新しい風・にぬふぁぶし、れいわ新選組推薦=と、再選を目指す現職の渡具知武豊氏(60)=自民、公明推薦=に、辺野古新基地建設問題や地域活性化策などについて聞き、文書で回答を得て、紙上座談会とした。 この記事の他の写真・図を見る 新基地建設 完成見通せず中止に 岸本氏 見解示す立場にない 渡具知氏 -辺野古の新基地建設に対する考え方と対応策は。 岸本氏 渡具知市長は「推移を見守る」として態度表明を避け続けている。それでは市民の命と暮らし、環境を守れない。無責任だ。名護市民は県民投票で73%以上の埋立反対の民意を示した。また大浦湾では軟弱地盤が見つかり完成の見通しがない。 県の試算で2兆5千億円以上の国民の税金がかかる。宜野湾市では米軍機からの落下物が相次ぎ、小学校の運動場にはシェルターが設置されている。新基地建設を中止し、普天間は閉鎖・返還するべきだ。 渡具知氏 辺野古の新基地建設は、県知事の承認を経て進められており、現在も国と県による係争が続いていることから、この係争が決着を見るまでは、私から何らかの見解を示す立場にないと考えている。 いずれにしても県知事が承認を出す際には、生活環境や環境保全等に関しても、県知事の審査を経た上で承認を出されていると理解しており、承認された内容に沿って事業者が生活環境や自然環境に配慮することは、当然のことだと認識している。 地域活性化 まちに活気取り戻す 渡具知氏 労働者所得向上図る 岸本氏 -地域活性化にどう取り組むか。 渡具知氏 名護ににぎわいを取り戻すまちづくりを通して、地域活性化を進めたい。沖縄北部テーマパークが開園する際は、地元企業や農業が盛んな地域に利益を還元できる仕組みをつくる。名護市が指定されている経済金融活性化特区の取り組みに加え、スマートシティーへの取り組みを強化し、これまで以上に多くの企業を誘致したい。 名護漁港付近に土地を確保し、鉄軌道やバス、タクシーなどが集結した総合交通ターミナルを整備。バス路線の再編やコミュニティーバス導入を中心市街地の再開発と併せて実現したい。 岸本氏 地元企業の優先活用と適正価格発注で経営の安定化を図り、労働者所得の向上を図る。企業人材育成支援も行う。空き店舗を活用した若者チャレンジショップや市民ギャラリーの開催、小さな図書館を設置。若者音楽イベント開催をサポートする。 世界自然遺産の玄関口として漁港と商店街を一体的に整備し、市内全域に高速ネット環境を整備し地域の事業者を支援。農林水産業の6次産業化と、製造業との連携で稼げる農林水産業を育成する。名護・屋部・羽地・屋我地・久志地域の均衡ある発展を推進する。 北部振興 予算確保し格差解消 渡具知氏 特産品と起業を支援 岸本氏 -北部振興で取り組みたいことは。 渡具知氏 沖縄の中で本島北部地域は、本島中南部と比べて所得などの面で格差がある。沖縄県の均衡ある発展のためには、北部振興事業などを活用し、本島北部の発展を進める必要がある。 これまで私が直接、政府や関係省庁へ働き掛けたことで、北部振興予算については総額20億円の増額となった。北部12市町村の振興・発展の着実な進展につながると確信しており、今後も確実な予算確保を行う。 岸本氏 北部地域の特産品販売戦略の強化と起業の支援に全力で取り組む。公立沖縄北部医療センターの整備は急務だ。がん放射線治療等、高性能先端医療機器も必要。さらに安心して子を生み育てる周産期医療の充実にも取り組みたい。 また、名桜大学の看護学部や北部看護学校等と連携し人材育成を図り地域医療・介護、高齢者や障がい者福祉の充実を図る。自然を生かしたやんばる地域の文化観光振興を推進する。 医療・福祉・教育 子ども太陽基金創設 岸本氏 女性の働く環境整備 渡具知氏 -医療や福祉、教育施策にどう取り組むか。 岸本氏 給食費、保育料、子ども医療費の無料化を継続する。待機児童が4年前より増え、100人以上という現状を改善するため保育士不足対応の支援金制度を作る。幼児から大学生までトータルで支援する「子ども太陽基金」を創設し進学に必要な費用や保育士処遇改善に充てる。 地元の農家と連携し給食に有機食材を提供する。障がいのある方々やご高齢の方々が安心して暮らせるよう各交通機関と連携しコミュニティバス等を運行。介護認定時に一時金を支給するなど手厚い生活支援策を迅速に行う。 渡具知氏 医療では、沖縄公立北部医療センターの整備を軌道に乗せることが大変重要だ。福祉では、女性の働く環境を整えることが重要で、妊娠・出産・子育てをサポートする施設を整備する。高齢者福祉も大切で、高齢者の皆さまの生きがい、健康づくりの場となる施設を整備する。 障がい者福祉についても、障がい者雇用の促進や公共施設のバリアフリー化を進める。教育については、学校業務を支援するシステムを導入し、先生たちの負担軽減を通して教育の質向上に取り組む。高校部活動への支援も行いたい。 コロナ対策 対策室を新設 渡具知氏 無料検査実施 岸本氏 -新型コロナ対策にどう取り組むか。 渡具知氏 これからも気を抜くことなく新型コロナ対策を強化していく。最近でも、市民への感染防止対策の呼び掛けや外務省に米軍の外出制限の要請をするなど緊急に対応が必要なことはしっかり対応している。市独自の取り組みとして実施した市内事業者への緊急支援事業などの実績を生かし、引き続き市民や事業者に寄り添った支援策を行う。コロナ対策室を新設し迅速な対応を取っていきたい。 岸本氏 無料PCR検査を県と連携して実施する。介護事業者に感染防止費用を給付。教育現場に専任スタッフ、保育所へ看護師を配置する。医療、福祉、学校、保育現場などで働くエッセンシャルワーカーや国の制度で支援が行き届かない方々へ市独自の支援策を実施する。18歳以上の大学生も支援。オミクロン株感染拡大は米軍基地から大きな影響がある。県と連携し、米軍に外出規制と検査の徹底を求める。