「企業は15年以上の長期目標急げ」(後藤敏彦氏)
オルタナは企業のCSR担当者向けの連続セミナー「サステナビリティ部員塾」を毎月開いています。12月16日の講義のテーマは「野心的な長期目標の策定方法」。登壇したのは、後藤敏彦・NPO法人日本サステナブル投資フォーラム理事・最高顧問です。講義の内容をご紹介します。 企業は15年以上の長期目標急げ
15年以上の目標設定企業は5%以下
10月に菅首相が「2050年カーボン実質ゼロ宣言」をしたことで、産業界は脱炭素に舵を切りました。「2050年までに二酸化炭素の排出量実質ゼロ」を目指すと宣言した自治体の数も180を超え、表明した自治体の総人口は日本の人口の3分の2に当たる約8600万人に及びます。 このような環境の変化から、後藤氏は「企業が生き残るためには、脱炭素以外はあり得ない」と強調します。そこで、重要になってくるのが、10年~25年のスパンで定める「野心的な長期目標」です。 ですが、野心的な長期目標を定めている企業は少数です。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の調査では、「機関投資家に対して具体的な長期ビジョンを示している」と回答した企業は68.3%に及びますが、示している年数については9割が「3年~10年」と答えました。15年以上のスパンで示した企業は5%以下でした。 では、どのようにして野心的な長期目標を策定すればよいのでしょうか。後藤氏は、「新しいパラダイムシフトの方向性を見極めて、会社のありたい姿を決めることが重要になる」と話します。 ありたい姿に到達するために、現時点からの発展戦略を組み立てるバックキャスティングの手法で中長期目標を考えるべきと言います。
長期目標のゴールは「必達目標」ではない
Twitter Facebook line LINE ポイントは、「ありたい姿」の定義です。よく日本では中長期目標を定めるとゴールを「必達目標」と認識してしまいます。「それは間違い」と後藤氏は指摘します。中長期目標のゴールは、プライオリティ&アスピレーションであり、必達目標ではないと言い切ります。 例えば2050年までの長期目標を策定するときの「ありたい姿」はこう考えます。 「2050年までに想定される制約条件をクリアしている姿が『ありたい姿』です。日本では2050年の制約条件として、脱炭素、高齢化率45%、人口減少があり、さらに石油由来のプラスチックの使用が不可になったり、鉄以外のメジャーなメタルのほとんどが枯渇していたりするかもしれません。会社として、これらの制約条件をクリアした姿を描いてください。そして、クリアするために今から何をすべきなのかを考えてください」(後藤氏)。 ありたい姿を描いた次に、現時点から到達するまでの発展戦略を考えていくのですが、その際に重要なのが、「企業戦略とSDGsやTCFDの対応戦略の一体化」です。それぞれのイニシアチブに合わせて対応戦略を考えるのではなく、企業の発展戦略と一体化させて考えることが必須になります。