「崩壊した当たり前の日常」障害児を育てる桜井奈々が苦しんだ孤立と偏見「私の想いは親のエゴだったのか」
桜井さん:やっと診断が出たと、すっきりしました。ホッとしたところが正直大きかったです。それまで娘のことで育て方の問題なのかと悩んだりもしたし、外出先で白い目で見られることも多くて。同じ月齢の子とようすが違うので、「親の教育ができていない」という目で周りから見られたりすることもしょっちゅうでしたから。診断がつかず、グレーの状態というのは本当に地獄でした。私自身も方向性をつかめず、娘とどう接していいのかわからない状態でしたから。育て方の問題ではないとわかり、救われました。
■入園で障害児育児の現実を突きつけられた ── 幼稚園の入園を検討するとき、ご苦労なさったそうですね。 桜井さん:通わせたい幼稚園の候補が2つあり、プレスクールに通っていました。娘は周りのやることを真似するところがあったので、ほかのお子さんたちと同じことはやれていました。なので、こちらが申し出ない限り、先生は娘の障害に気づかなかっただろうと思います。でも、これからお世話になる園だから、正式に入園する前に先生に伝えておこうとしたら、その場で「じゃあうちは無理です」と断られました。
過去に同じような障害を持つお子さんが入園しトラブルが絶えなかったそうで…。ただ幼稚園としての立場もわかるので感情の板挟みになってしまい、つらかったです。障害を持っていても全員がトラブルを起こすわけではないですし、偏見ってこういうことかと。社会における障害児の現実を突きつけられた最初の出来事でした。 努力がたりず園に落ちたわけじゃない。ましてや、プレスクールにも問題なく通っていたのにと思うと、悲しくて。さらにそのとき「障害がある人は障害のある人の中でしか生きていかないから、親のエゴで健常児の中に入れる必要はないですよ」と言われて。その言葉を聞いて凍りついてしまって「私の思いは親のエゴだったのかな」と。親として、健常児の中で娘にできることがあったら一緒にやりたいなと思うことがエゴだったのかと。気持ちがズタズタになりました。