「生成AIで仕事がなくなる」ってホント?未来を過度に恐れる必要はない理由
■ 生成AIの影響を受けやすい職種は? 今からさかのぼること10年ほど前、AIが労働市場に与える影響についての研究結果に注目が集まった。それは、労働人口の半数近くがAIやロボットなどで代替可能であるというものだった。 しかしその後、研究が進展するにつれて、半数近くが代替されうるという予測は過剰であると考えられるようになってきている。これにはいくつか理由がある。 まず、分析単位の問題がある。職業を分析単位とする場合には数値が大きくなる傾向にあり、タスクを分析単位とする場合には数値が小さくなる傾向にある。ある職業のうち少数のタスクが代替可能であっても、その職業がなくなるわけではない。そのため、現在はタスクを分析単位とすることが主流となっている。 また、時間軸の捉え方にも問題がある。「将来的にいつかは代替可能になる」と「今後10年程度で代替可能になる」では大きく意味合いが異なる。時間軸を長くとれば、代替可能性が高まることは想像に難くない。 さらに、技術的に可能であっても、経済的に代替が進まない場合がある。AIを使うよりも、人を雇った方が安いような状況下では、経済的な理由で代替は進みにくくなる。 これらを念頭に置く必要があり、また職種の分類方法が異なることもあるため、結果の解釈はしばしば難しく、単純比較も困難だ。しかし、生成AIの影響が認識され始めた2023年以降に書かれた著名な論文には共通点があることに気付かされる。 例えば、2023年*2 や2024年*3 に公表された研究結果を見てみると、生成AIの影響を受けやすいのは事務職や専門職、管理職など、いわゆるホワイトカラー、また影響を受けにくいのは技術職や単純作業などのいわゆるブルーカラーといわれている。 ホワイトカラーを中心とした職種が、生成AIによって一定の影響を受けるのは確実なように思われる。ただし、時間軸を考慮しながら具体的に考えてみると、見え方は少し変わってくるかもしれない。