大学までスカウトの目に留まらずも、自らの力で来季Jリーガーに…ホームセンター勤務・高知ユナイテッド新谷聖基の道のり
[12.7 J3・JFL入れ替え戦第2戦 YS横浜 0-2 高知ユナイテッド ニッパツ] 【動画】アウェー中国戦の裏で起きていた珍事…日本代表FWがSNS上の声に反応「わざと」 J3参入を大きく引き寄せる得点となった。高知ユナイテッドFW新谷聖基は前半7分に先制ゴール。1日の第1戦で出場がなかった分「決めたろうという気持ちは強かった」。渾身のヘディングシュートをゴールネットに突き刺した。 チャンスは試合序盤にやってきた。「コーナー付近になればクロスをしっかり上げようとチームで意識していた」(新谷)。右サイドでDF小林大智がボールを持つと、新谷がPA内で構える。「(小林が)中を信じて上げてくれた。自分もタイミング良く信じて入った」。両足で踏みしめたハイジャンプからヘディングシュートで合わせ、ゴール左隅に流し込んだ。 先制成功から勢いを落とさなかった。最前線に立った新谷は果敢なプレスを続けた。「自分がスイッチをかけて、後ろもしっかり連動していた。(ゴールが)決まった後もかけられていたので、チームとしても統一できていた」。右足ふくらはぎが攣るまで走り続け、新谷は後半26分に途中交代。ピッチの外で栄光の瞬間を見届けた。 第1戦はベンチのまま出番なし。吉本岳史監督は新谷の第2戦起用について「自信を持って送り出した。クロスからのシュートというのを期待して送り出した」と語っていた。その一方で、新谷は裏話も明かす。「聞いた話なんですけど、(吉本監督は)リーグ戦でも朝の散歩まで悩んでいることが多くて、今日もたぶんずっと悩まれていた。それで、僕がスタメンとその散歩で決めたらしいです」。指揮官は綿密に考えを張り巡らせた末、新谷起用を奏功させた。 東山高、京都先端科学大では全国大会にも縁がなく、新谷のサッカーキャリアは大学卒業とともに終わろうとしていた。「そもそもスカウトが来ないので」。大学4年の夏、数少ないセレクションの場として高知ユナイテッドを受験。自ら実力を示す形で合格を掴み、2021シーズンからJFLでプレーを始めた。 高知ユナイテッドの選手たちは、ほとんどが企業に勤務しながらプレーをしている。新谷はホームセンターで品出しを担当。練習と企業勤務をこなすために、職場は近いところを選んだ。「練習が終わって帰ってきてから、家が近いとちょっとでも仮眠できるので」。厳しい環境にも「そこはもう仕方がないではないけど、理解しつつやっていた」と笑顔を見せた。 Jの舞台に上がってもホームセンター勤務は続ける予定だという。これまで勤務中に声をかけられることもたまにあったが、今回の活躍でそれも増えるかもしれない。「(金髪が)目立っちゃうかも」と照れながら、現状の喜びを改めて噛みしめていた。 長い道のりを経て、いよいよJリーガーになる。新谷は「そこを目標にずっとサッカーしてきているので、ひとつ目標が叶った」と思いを語る。「JFLのようにはうまくいかない試合のほうが多いかもしれない。だけど、新しい挑戦じゃないけど、しっかりチーム一丸となってがんばって、1勝1勝していけたら」。たどり着いた舞台を前に、目を輝かせていた。