「還暦」迎え、増す重要性 国内初の重力式コンクリートダム・大野ダム
京都府南丹市美山町樫原にある大野ダム。一級河川・由良川の上流にあり、国内初の重力式コンクリートダムとして造られ60年、ことし「還暦」を迎える。洪水調節が最大の目的の施設で、近年、豪雨被害が増える中で下流域の福知山市などにとって、益々重要性が高まっている。 大野ダムは、治水と水力発電を目的に、由良川改修計画の一環として、1957年に旧建設省が工事着手し、61年11月に完成。翌年4月に府に管理、運営が移管された。
貯水湖の総貯水容量は京セラドーム23杯分
ダムの規模は、堤高が61・4メートル、堤頂長は305メートル。堤体積は16万7千立方メートル。貯水湖「虹の湖」の総貯水容量は2855万立方メートル(トン)で、最大で京セラドーム大阪約23杯分の水をためることができる。上部のクレストゲート(3門)、下部の放流管ゲート(同)から、貯水湖にたまった水を放つ。
洪水調節は、大雨が降り洪水が起きそうな時、上流から入ってきた水をダムにため、流入量より少ない量の水を放流して下流域の河川水位の上昇を抑制。氾濫を防いでいく。 流入量がこれまで一番多かったのは72年9月17日の台風20号の時で、毎秒1989トンの水が入り、1189トンを放流した。ダムの貯水位が一番高くなったのは2013年9月15日の台風18号発生時の175・37メートルで、定めている洪水時最高水位(175メートル)を少し超えた。
大雨の頻度高まり、年1回のペースに
ダムへの流入量が毎秒500トン以上になり、洪水調節をしたのは1965年(昭和40年)から08年(平成20年)までの44年間では計14回だった。これは3年に1回の割合だが、09年から18年までの10年間では10回を数え、年に1回のペースとなっている。大雨の頻度が、近年は急速に高まっていることが分かる。
大野ダムの洪水調節は1953年(昭和28年)9月の台風13号による出水「28水」(おおむね100年に1回程度の洪水)を対象に計画。毎秒2400トンの流入があった場合、1400トンを放流すると、ダムから42キロ下流の福知山市内(音無瀬橋付近)での河川流量は5600トンに。もし大野ダムが無いと、流量は6500トンとなり、洪水が発生する確率が高くなるという。 ダムからの放流が下流域に達するまでの時間は27キロ先の綾部市まで約2~3時間、福知山市までは約3・5~5時間かかるが、洪水時には水位の上昇が早くなる可能性がある。 異常な大雨や長く洪水が続いて、大量の水がダムに流れ込み、貯水位が上がって、これ以上水をためることができない時は、緊急放流(異常洪水時防災操作)をする。この場合、上流からダムに入ってくる量と同じ量の水を流す。2013年9月の台風18号では、初の緊急放流を行った。