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空想の翼を広げる──家から旅に出る方法・フランス編

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GQ JAPAN

緊急事態宣言が解除されたとはいえ、海外旅行にはもう少し時間がかかりそうだ。それならば、家にいながら旅行気分を味わおう!連載2回目は、フランス在住のジャーナリスト・魚住桜子がオススメするフランス編。 【写真を見る】フランスを旅してみる!

憧れの街、パリ

もしタイムトリップができたなら、1920年代のパリに行ってみたい。『移動祝祭日』を読んで、そう強く思った。第1次大戦終結後、人々が生きる歓びを満喫していたパリには、世界中から若い作家や芸術家が集結し、新たな創作が生まれた。ヘミングウェイは「パリには決して終わりがなく、そこで暮らした人の思い出は、それぞれに、他のだれの思い出ともちがう」と綴っている。 年々、ネットの肥大化もあって「パリへの憧憬」は薄まっているが、なぜパリはあれほど芸術家たちを惹きつけたのか? どんな時代にも異邦人を受け入れる懐の深さがあって、ノンシャランで熱狂的、反骨精神とユーモアを持ち合わせ、自由で孤独、そこには混沌が入り混じっている。なんだかとても人間臭い。ウッディ・アレン監督の『ミッドナイト・イン・パリ』では「移動祝祭日」の頃のイキイキとしたパリが蘇える。ヌーヴェルヴァーグの影に隠れて地味な存在のクロード・ソーテ監督は、微妙に揺れる人間の感情の機微を描いたら右に出るものはいない、と思わせる恋愛映画の名手だ。『過ぎ去りし日の…』ではパリ以外に、大西洋沿いの港町ラ・ロシェルや陸続きの島イル・ド・レなどフランス人好みの避暑地が登場する。叙情的な音楽と相まって、なんともいえない切々とした気分になる、フランスの雰囲気をたっぷりと味わえる作品だ。ジョエル・ロブション氏が数多く残したスペシャリテの中でもとびきりワイルドなタラのフライ“コルベール風”。なんともおっかない顔の魚だが、見た目に反して繊細な味わい。付け合わせのマッシュポテトのバターの量はハンパじゃないが、一口、また一口と食べ進めるうちに、幸福感がじわりと体じゅうにゆきわたり、なんとも大らかな気分になってくるから不思議だ。幻のシャンパーニュ「サロン」の片鱗としての高い品質を誇りながらも、お手頃価格で楽しめる「ドラモット ブラン・ド・ブラン」。栓をポンっと抜いた途端に、その場にいる人々の顔が一瞬のうちにほころび、一杯飲めば、たちまち饒舌になっていく。チリチリと弾ける泡の音を聞くだけで、何かいいことがありそうな予感がする。気が滅入っている時にも、ちょっとした気分転換にも、気楽に楽しみたいシャンパンだ。

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