「蔑視」は森氏だけの問題か(中) スポーツとモラル その2
【まとめ】
・東京五輪組織委員長に就任した橋本聖子氏、過去にセクハラ問題起こしていた。 ・彼女もまた、森氏の息がかかった人物である。 ・日本型組織の弊害が表面化した問題であり、政界もスポーツ界も時代の変化について行けていない。
新たに東京五輪の組織委員長になった人の略歴を調べようと検索してみたところ、 「橋本聖子 セクハラ」 が検索ワードの上位に来ていて驚いたと、前回の最後で述べた。驚いたというのは、有名な話なのにみんな初耳だったのだろうか、といった意味である。 2014年2月24日、深夜2時頃と伝えられるが、ソチ冬季五輪の閉会式が無事に終わり、スケート競技の日本選手団が宿舎で打ち上げパーティーを開いていた。その席上、選手団長を務めていた女性が、男子フィギュアスケートで6位入賞を果たした選手にキスを強要した、というのである。この女性アスリートの名は橋本聖子。キスの現場写真は週刊誌等にすっぱ抜かれ、今次、彼女が東京五輪の組織委員長になったというニュースが流れると同時に、世界中に拡散することとなった。 7年前の「事件」当時も当然ながら問題になったが、両者が「セクハラではない」と明言したことから、JOCは不問に付している。 当人も就任記者会見でこの問題について、7年前も今も深く反省している、と繰り返していたし、マスコミが今食らいつくべきは、東北新社に勤務している菅首相の息子が、監督官庁である総務省の官僚を接待していた事案の方ではないのか。 ……というのが本音ではあるのだが、今次のテーマは東京五輪なので、とりあえずはその問題にこだわって書かせていただく。 まず、どうして橋本新委員長なのか、という点だが、彼女は前々から「五輪の申し子」と呼ばれていた。なにしろ、1964年の東京五輪の開幕直前に生まれ、聖火にちなんで聖子と名づけられたそうだ。北海道出身で、1972年の札幌冬季五輪を見て、自分も幼い時から好きだったスケートで、いつか五輪に出てみたいと願いようになったという。そして、夢を実現させた。ちなみに駒大苫小牧高校の卒業生で、今季から東北楽天に復帰することになった田中将大投手の先輩ということになる。 検索して初めて知ったのだが、彼女は2000年に最初の出産をして以来、3人の子供をもうけているが、いずれも五輪開催年に生まれたこともあり、五輪にちなんだ名前をつけているという。 まあ、キラキラネームの問題も含めて、命名は個人の自由だが、冒頭で紹介した「事件」の時点では、すでに思春期になった子供を持つ母親でもあったわけだ(1998年に警察官と結婚し、戸籍上は石崎姓)。セクハラか否かを問う前に、大人としていかがなものか、と考えるのは私だけだろうか。 いずれにせよ、五輪にそこまで思い入れがあったからこそ担当大臣、そして組織委員長に……という道を歩んだわけではない。 1995年、参議院比例区に自民党から立候補し初当選を果たすが、これは森喜朗氏の働きかけによるものと言われている。翌96年には自転車競技でアトランタ五輪出場を果たすが、現職国会議員と五輪出場選手の「二足のわらじ」は、なぜか快挙と称えられるどころか、政界とスポーツ界の双方から批判の声が上がったとか。この結果、当人に言わせれば体力・気力にはまだ自信があったものの、選手生活にピリオドを打つこととなった。 早い話が、森氏のおかげで政治家になれた人なので、失言の後始末と言うか、火中の栗を拾う役目を押しつけられたというのが、政界消息筋の見方なのである。 もちろん表向きの説明はまったく違う。森氏の失言によって「日本は女性蔑視の国」というイメージが広まるのを防ぐべく、新たに女性をトップに起用したのだとか。 本当にそうなら、小池百合子・東京都知事こそ、もっともふさわしかったのではないか。