父にさえ伏せた「がん」も自虐ネタで笑いに 爆笑問題・田中が語る優しくない漫才
「『チビ』だとか『カタタマ』だとか言うのは、僕が傷ついてなければ『イジり』で、僕が嫌がっていれば『イジメ』だ、みたいなことを言うけど、それって僕にしかわからないことじゃないですか。本当は傷つきながらもやっているかもしれないし、他人がジャッジする術はないんです。僕だけがジャッジできる。たとえば『カタタマ』だっていうのを、太田が言う場合、別の芸人が言う場合、一般の人が言う場合と、その相手や状況で変わってくる。テレビを見てそれを笑っているのは、イジメられっ子がイジメられているのを傍観して笑っているのと構造では一緒なんです。だから、一言で決めつけることはできない。イジメ的な要素がないっていうのは、あり得ないんじゃないかなって思います」
父にも伏せた「がん」
田中が「カタタマ」として言及しているのは、2000年の睾丸摘出手術だ。精巣腫瘍が肥大化し、手術を余儀なくされた。いまでこそネタとして昇華できているが……。 「あのときは公表してないけど、要はがんですから。そのとき、がんっていうフレーズがあったらもっと騒ぎになっていたと思うんです。父親にも『ただの良性の腫瘍だから』としか言わなかったんですよ。だから、そういうのもあって公表はしなかったですね。事務所内とか病院関係者以外は知らなかったはずです」 一方の太田は、田中の休業を発表する会見に、危機感を持って臨んだ。 「ここでシリアスになったら芸人として終わる」と考え、徹夜でネタを仕込んだ太田。記者からの質問はすべてギャグで返され、緊迫した空気は一気にはじけた。 「ウケてくれて良かったなあと思って会見を見てました。あれで大したことがない雰囲気になりましたからね。大正解だったと思います。いまだにネタにできるのは、あれがあったからです」
術後から完治まではおよそ5年。放射線治療、転移検査、定期的な血液検査の末、医者から「もう大丈夫、完治です」と告げられた。 「これが別の所のがんだったらそうはいかなかったんですけど、『金玉』っていう間抜けさ(笑)。ちょうどシドニー・オリンピック中で、『金取った』ってネタにできたのも助かりましたね。入院してすぐ(笑福亭)鶴瓶師匠が、『ホンマ、ええな、おまえ。うらやましいわ。最高やで。芸人で玉1個っちゅうのは』と言ってくれたり、(立川)談志師匠も『何だおまえ、かみさんに金玉食いちぎられたらしいな』と笑ったり。すごくうれしいし励みになりました。深刻かもしれないですけれども笑いに変えるというのは、ずいぶん救われました」