過去最多のネットいじめ、相次ぐ誹謗中傷…SNS運営企業の対策は?【WBS】
「ネットいじめの認知件数は過去最多となり、深刻な問題であると受け止めている」 13日、松野官房長官が語ったのは、深刻なネットでのいじめの実態です。小学生や中学生などが受けたパソコンやスマホを使ったいじめの件数は1年間におよそ2万2000件確認されるなど過去最多となっています。 背景の一つとして指摘されるのは、情報端末の普及です。政府は今、教育現場のデジタル化、ギガスクール構想を推進していて、小中学生にパソコンなどの端末を1人1台持たせることを目指していますが、端末が普及し始めたことで、いわゆるネットいじめが増えたとの見方もあります。
「ギガスクール構想を進める中、SNSでの書き込みによるトラブルの原因や回避の方法を考えるなど、情報モラル教育の充実にも取り組んでいる」(松野官房長官) 弁護士事務所「レイ法律事務所」の山本健太弁護士によればネット上で誹謗中傷の内容によっては刑事責任を問われる場合もあり、相談が増えているといいます。 「ネット上に転がっている情報をデマ情報でもそれをもとに誹謗中傷したり、写真付きで『死ね』などという言葉を使う書き込みもある」(山本弁護士) SNSの誹謗中傷の場合、24時間目につくことになり、精神的な苦痛が大きくなる傾向にあるといいます。 「正しいSNSの知識を身につけ、特にメリット、デメリット、そして法的な観点からどういう問題点があるのかしっかりと認識する。学校や職場においてSNSのリテラシー教育を積極的に行う仕組み作りを行政と一緒になって考えていく必要がある」(山本弁護士) こうした状況に企業も対策を進めています。 SNSやネットゲームを運営するグリーが開発したのは、ネット上の誹謗中傷や炎上が起きないよう知識を得るための教材です。教材は、小学5年生から大人まで幅広い世代が対象で、誰にでもわかりやすいように文章ではなく、画像を中心に作ったといいます。 「渋谷のスクランブル交差点は1日数十万人が通り過ぎる場所。そこでボードにプライベートな気持ちや個人情報を書き、30分くらい立ってください。実はネットに何か載せる行為そのもの」(グリー政策企画グループの小木曽健さん) グリーはこの教材を使って、全国の学校や企業で無料の講義を開催していますが、教材の中身は子供でも大人でもほぼ同じだといいます。 「リテラシー、善悪の判断は、ネットと現実で何一つ違いがない。そこを踏まえないとネットを活用できない」(小木曽さん) 一体なぜグリーが教材を無料で提供するのでしょうか? 「われわれはIT企業でネットを使ってもらうことがビジネス。ネットを活用して、幸せになるためには、ネットを理解し道具として使う必要がある」(小木曽さん) ほかにもヤフーではニュースへのコメント欄にある不適切な投稿をAIなどを活用して検出し、削除する仕組みを導入。投稿するには、電話番号の登録を必須にするなど対策を強化しています。 ただこうした事業者側の対策は万全とは言えません。 誹謗中傷ホットラインを運営するセーファーインターネット協会によると、事業者などに投稿の削除を要請しても、実際に削除されるのは全体の6割未満。対応が追いついてないと言います 「被害に遭われた方から、迅速に連絡をもらって、私たちで迅速に対応することに今後も注力する」(セーファーインターネット協会の中嶋辰弥事務局長)