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容赦なき韓国ノワール映画の世界とは? 『シュリ』から『パラサイト』まで

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GQ JAPAN

映画『パラサイト 半地下の家族』が、第92回アカデミー賞の作品賞を獲得したことで、韓国映画がかつてないほど熱い注目を集めている。名作揃いの映画ジャンル「韓国ノワール」をライターの岡本敦史が紹介する。 【写真を見る】絶対見るべき韓国映画をチェック

大作『シュリ』

韓国映画がはじめてその底力を世界に示したのは、南北分断の悲劇をテーマにしたアクション大作『シュリ』(1999)だった。そのときから現在に至るまで貫かれてきた特色が「容赦のなさ」である。北朝鮮の女性スナイパーが、韓国国家情報院のエリート職員を本気で愛してしまう悲劇的メロドラマを主軸に、ハリウッド顔負けの大がかりなアクションを展開しつつ、もっとも衝撃を与えたのは「ヒロインが恋人に面と向かって射殺される」という非情な結末だった(しかも血まみれ)。 韓国映画ってすごいかもしれない……と思った数年後に公開された『復讐者に憐れみを』(2002)は、もっと容赦なかった。姉の医療費を稼ぐために少女を誘拐した聾唖の青年と、我が子であるその少女を誘拐され、命まで奪われた中小企業の社長が、壮絶な負の連鎖と復讐の応酬を繰り広げる。善良な者たちが殺し合う悲惨な物語の背景には、90年代末の深刻な財政危機(IMF危機)の影響で広がった社会格差という『パラサイト』と共通するテーマも含まれている。愛娘の敵討ちに燃える社長を演じたソン・ガンホが、『パラサイト』では裕福な社長一家に寄生する下流家族の父親を演じているのも興味深い。 そんな底抜けに救いのない話を、底意地の悪いユーモアと激痛暴力描写をちりばめて描いた監督の名は、パク・チャヌク。翌年、やはり壮大な復讐劇を描いた『オールド・ボーイ』(2003)でカンヌ国際映画祭の審査員特別グランプリを獲得した鬼才である。 パク・チャヌクは『復讐者~』と『オールド~』の2作で、韓国映画人が得意とする「容赦のなさ」が、犯罪映画にベストマッチするという事実を示した。それも、罪によって身を滅ぼす人間の闇を見つめた、フィルムノワールという映画ジャンルに。ここから韓国ノワールという新たなカテゴリーが本格的に盛り上がっていく。 人気俳優イ・ビョンホンが主演した『甘い人生』(2005)も韓国ノワールを代表する1本だ。敬愛するギャングのボスにホテル経営を任された男が、ボスの愛人に恋したことから瀕死の目に遭い、反旗を翻す……というストーリー自体は古典的なものだが、監督のキム・ジウンは凄惨な拷問シーンやド派手な銃撃戦を盛り込み、韓国映画ならではのスパイスを利かせた快作に仕上げてみせた。同時に、ハリウッド大作クラスの難易度の高い特殊効果にも挑み、製作現場の技術力と表現力をめきめきと向上させた。

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