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日本製鉄・橋本社長の会見要旨 中国を意識し内外戦略強化

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日刊産業新聞

日本製鉄の橋本英二社長は1日のマスコミとの合同懇談会で国内の構造改革や海外展開など成長戦略を語った。「中国を意識しない戦略はない」と中国への対抗策を説明し、総合力世界トップへの道筋を示した。一問一答は以下の通り。 ――現状から。 「需要は内需、輸出ともに厳しい状況が続く。2月発表の構造改革の想定より需要は低い。競合する中国の力をしっかり見極めないといけない。中国の優位性は明らかにもう一段増すことになる。極めて厳しい経営環境になる。収益上の問題は日本国内の製鉄事業にあり、赤字が継続拡大している。製鉄事業のグループ会社は収益を出している。海外事業は合計で黒字になっているが、本体やグループとのシナジーの役割を終えた事業会社は撤退する。国内事業のテコ入れと海外の見直し撤退が収益上の大きな課題だ」 「需要水準に応じて生産体制、高炉のバンキング(一時休止)含めて需要の低下に手を打ってきた。現時点で高炉全15基のうち6基歩を休止し、残り9基が稼働している。19年度下期に安定に操業し、計画通りに生産でき、さらに変動費の削減を積み上げていく。固定費は20年度の2000億円の削減計画にプラスアルファで圧縮する。資金面は十分手当できている」 ――収益はどの程度を目指すのか。 「旧住友金属工業と12年度に統合し、アベノミクスの円安効果で比較的恵まれ、13、14年度と利益が出た。その利益を確保するのがボトムラインだ。固定費は圧縮しなければならない。決定済みの対策の前倒し、追加の対策を検討はするが、顧客の認証をいただく必要があり、停止する設備から生産を移管する受け皿の設備は改造を必要とする場合があり、同等の品質が前提なので丁寧に進めるために簡単にはできない。コロナ後も需要が回復しないのであれば大きな構造改革は不可避。検討に入り、成案した時に公表する」 ――需要が回復する見通しだが、高炉のバンキングの解除は。 「休止している高炉6基のうち、下期のうちに1基を動かさないと粗鋼が足りなくなる。精査して正式に決める。今の注文構成では国内の鉄鋼事業は黒字にならないので注文を高度化する。中国のコストがマージンを決める低採算品は生産を減らす。一方で効率性を上げる方向性電磁鋼板、EV向けに増える無方向性電磁鋼板について大きな投資を行っている」 ――下期計画の粗鋼1700万トンから上振れする可能性は。 「国内外の需要が増えれば、上振れする可能性はある。中国の需要が活況で熱延コイルの価格が上がり、引き合いも増えているが、来年度以降も続くかどうか。一定レベルの採算が続くかどうかを見極める。鉄鉱石の高騰とも関係し、来年上期をみないとわからない。下期の1700万トンでは黒字には遠い。さらに上を狙うが、来年度の粗鋼はコロナが収束していない中ではまだ言えない」 ――全国粗鋼は1億トンに戻らないのか。 「今年度の内需は5000万トン程度。巡航速度で6000万トン、平成初期は9000万トンとかなり減っているが、1人当たりの鉄鋼消費は500キロ近くと高い。欧米は300キロ程度。間接輸出が多いためだ。建設や製造業の需要は人口の減少・高齢化で増える方向にはない。間接輸出は市場の分断のなかで増えていくとは限らない。平成の30年余りの間で3000万トン減った内需を輸出でカバーし、粗鋼生産1億トンを維持していきた。中国がいずれ輸出を増やすと考え、中国の民営高炉メーカーがアセアンに製鉄所を建設していることもあり、日本から輸出を増やせず、粗鋼は1億トンに戻ることはないと考えざるを得ない。20年度の全国粗鋼は8000万トンを切ることは十分あり、来年度は少し戻ると思うが、1億トン台に戻るかどうかは難しい」 ――ひも付き価格是正の進ちょくは、 「2つのキーワードがある。材料の価値とお客様への貢献が正しく反映されることだ。サプライチェーンの中でいろいろとコストが上昇している。鋼材は運搬が難しいので物流を自社で行い、価格は持ち込みだが世の中の変化で物流費が上がっている。主原料・副原料価格は中国の事情で決まる。フェアな分担をお願いしている。価格の是正は徐々に進みつつあると思っている。価格問題は経営問題であり、全営業部長と直接対話を繰り返し、具体的に顧客とどのような交渉するかを考えている。経営が余剰の生産能力をそのままにしておけば、営業にプレッシャーがかかる。社長が価格の問題を営業ラインと共有することが大事だ」 ――海外事業は。 「コロナ後はますます市場の分断、地産地消、保護主義が進む。海外展開について当社は世界の鉄鋼メーカーのなかでも独走体制にある。戦略は間違ってなく、海外事業をさらに進化させていく」 ――海外の投資先は。 「インドは間違いなく需要量が伸びる。インドは西部の製鉄所を獲得してインサイダー化したので、もう一つ、2つ東海岸で絵を描ける。米州はアルセロールミッタルとJV(合弁)を行っているので拡大の余地がある。アセアンはベトナムやインドネシアにとって中国ミルが最大のサプライヤーになっている。看過するわけにはいかず、アセアン対策は一つのキーになる。アセアンは一つ一つの国の市場は規模が小さいので一貫製鉄所を造るということはなく、電炉が考えられる。国内は需要水準をみてスリム化し、国内生産は国内比率が高まる。中国の沿岸部から日本に持ってくるのは海上輸送コストがかかるので、物流のコストが収まれば市場守れる。そういうことが中国への対抗となる。海外は先行しているので中国材を迎え撃つ。海外展開は対中国戦略。中国を意識しない戦略はない」 ――中国の需要が止まった場合のリスクをどうみているか。 「公共投資と製造業の需要がどうなるか。(公共投資の一巡は)欧米や日本で起きたことだが、中国はわからないと言われる。奥地はまだインフラが足りず、大都市と同じようにインフラを整備する。新規の労働力に対し雇用を与えないといけない事情もある。内需を消費型に変えるには時間かかり、公共投資を減らすことができないが、どこかで一巡する。3年以上続くとは考えていない。中国では新たに製鉄所が建設され、沿岸部だけで粗鋼能力が現状の1億トンから2億トンに増える。対策を打たないといけない」 ――対策とは。 「需要が減るなかで国内の能力は縮小するが、技術力、開発力の源泉は一貫で造ること。上工程から造る力が日本で維持されないと技術の維持発展はできない。海外に高炉一貫製鉄所を建設する蓋然性はほぼゼロなので日本に製鉄所を残す。国内はマザーミルとしてきちんとした収益を出す。世界戦略を支える一貫製鉄所として投資を行い、新しく生まれ変わる。日本と海外の連結で粗鋼能力を考える。現在は国内4000―4500万トン、海外2000万トンで6500万トンだが、1億トンに増やさないと名実ともにトップの鉄鋼メーカーにはならない。時期は決めてはいない」 ――世界粗鋼の順位が下がるのでは。 「中国に生産量では勝てない。技術商品力が生きるところで積極的に投資を行い、世界連結で1億トンを目指す。企業価値世界NO1を目指すが、中国だけが鉄鋼需要が伸びている。まずは中国を除いて世界一の座を取り戻し、その後に中国対策を積み上げ、いずれの日にはと考えている」 ――鉄源の多様化の考えを。 「電炉を導入するが、CO2対策のために電炉化するというのは間違いだ。全体のライフサイクルでいえば高炉と電炉は等価。CO2対策のためにやっているわけではない。電炉について3つの観点から積極的にスタディするよう指示している。資源の活用、投資額の圧縮、海外展開の選択肢だ。国内の鉄源の電炉への切り替えは課題が多い。国内はさらに高級鋼にシフトしていくが、高炉品と同等の品質確保できるか。高級スクラップの調達や技術の蓄積が必要となる。国際的にみて日本の電力は高い。夜間だけとはいかず、24時間操業になるが、いまの電気代で電炉はなりたたない。政府に働きかけないといけない。高炉の改修時など投資のタイミングも重要だ。技術、電気代、タイミングの3つの問題がある。広畑で電気炉を建設し、電磁鋼板など高級鋼にチャレンジする。インドのエッサール(AM/NSインディア)に小型の電炉があり、能力増強の時に電炉を視野に入れる。薄スラブ連続鋳造・圧延設備になるとみられ、具体的に技術を蓄積する」 ――国内のあらたな再編については。 「国内で再編を進める考えはない。これまでのシナジーを出し切っていない、進めてきた再編統合のシナジーを構造改革で出し切る。海外はM&Aを進める。グリーンフィールドの一貫製鉄所の建設は5年かかる。従業員を採用して訓練し、販売先を確保しなければならない。鉄鋼の能力は世界的に余剰なので新規の立ち上げは難しい。インドはエッサールを買収し、実力で黒字基調を保っている。立ち上げのリスクを回避するために海外展開は基本、M&Aでと考えている」(植木 美知也)

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