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『謎解きはディナーのあとで』の著者・東川篤哉が語る 鯉ケ窪学園シリーズ最新作の創作秘話

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Book Bang

読者を騙すための舞台「鯉ケ窪学園」

――『君に読ませたいミステリがあるんだ』は、鯉ケ窪学園シリーズとしては『探偵部への挑戦状』(2013年)以来、久しぶりの新刊です。今回の作品は、どのように生まれたのでしょうか。あと、前作からあいだが空いた理由も、差し支えなければお聞かせください。 東川:そもそも、この連作のミステリのトリックというか、最後のオチがあるじゃないですか、まずそれを思いついたんですよ。たぶん『純喫茶「一服堂」の四季』を書いているころだったと思うんですが。で、それをやるには、学園を舞台にしたほうが上手く読者を騙せるんじゃないかと。だったら鯉ケ窪学園シリーズでやるのがいいんじゃないかなと思ったんです。 だから、「鯉ケ窪学園シリーズの新作を」と依頼があった時にそれを書こうと思ったのですが、なぜか年に一回の連作になったんですよね。その経緯はよくわからないんですけど(笑)。僕は今忙しいですみたいな感じで、断ったわけじゃないけど、もうちょっとあとに……みたいなことは言った記憶があるんですが、当時の担当の方がそれをどう解釈したか、年一回の連作にしましょうみたいなことを言われて。それで結局、五話書くのに五年かかったんですね(笑)。だから前作からあいだが空いたわけです。 でも実際書いてみると、年一回って書きにくかったですね、去年書いた設定とか、どんな伏線を張っていたかとか忘れてるから(笑)。もうちょっと集中して書けば良かったのかもしれません。

初めて「作中作」ミステリに挑んで

――今回の作品では、鯉ケ窪学園第二文芸部の部長・水崎アンナが、自分の書いた犯人当てミステリの原稿を語り手の「僕」に読ませる……というかたちで話が進んでいきますが、東川さんにとって、作中作ミステリは初めてですよね。 東川:初めてですね。 ――それまでの書き方と勝手が違ったみたいなことはありますか。 東川:いや、それはべつに。……作中作に移るまでに、アンナが「僕」にミステリを読ませる展開に持っていかなければならないというのは毎回考えどころでした。そこはちょっと面白く書けたんじゃないかなと思います。 ――水崎アンナの手による作中作ですが、読み終わったあとで「僕」が突っ込みを入れられるよう推理の穴を用意しておかなければならないとか、素人の高校生が書いたものだから巧すぎてはいけない……といったあたりは意識されたのでしょうか。 東川:それも考えたんですけど、結局、普通に書いてもどうしても辻褄が合わないところが何カ所か出てくるものです。そこをあとで「僕」に突っ込ませるみたいなことはお約束で毎回やっていましたが、決してわざと下手に書いていたわけでは(笑)。突っ込みどころを先に考えて書いたわけではなく、書き終えたら「ここ、なんか弱いな」というところが見つかって、それを「僕」に突っ込ませるという、そういう感じで書いてましたね。 ――毎回、作中で動機が言及されていないという点については。 東川:あれはわざとですね(笑)。そもそも動機について読ませる作品でもないという感じで、途中からはわざと動機については適当にデッチ上げる感じで書きました。 ――鯉ケ窪学園シリーズは、長篇では殺人事件が起きているものの、霧ケ峰涼が登場する短篇のほうでは起きていません。ひとつの学園で頻繁に殺人が起きるとどうしても不自然になってしまいますが、作中作というかたちにすれば、いくら殺人事件を起こしても不自然ではない……という狙いもあったのでしょうか。 東川:それはたしかに。そうですね、狙ったわけじゃないけど、作中作だからいくらでも人が死んで大丈夫というのはありましたね。ただ、霧ケ峰涼シリーズでも、人が死んでないだけで、傷害事件は沢山起きていて、ギリギリ命が助かってるだけですから(笑)。 ――作中作を扱ったミステリの先例は何か意識されましたか。 東川:そんなに読んでないからなあ(笑)。作中作を書こうと思ったというよりは、あのトリックを書く時にどうしたらいいかなと考えて、そうならざるを得なかったという感じです。何か物語の周りにフレームがあれば勘違いさせられるかな、というところから思いつきましたね。 ――まずトリックのために作中作という設定が生まれ、そこから学園ものにするという発想が生まれ、更にそこからああいう小説を書くのはどんな人物かという発想から、水崎アンナというキャラクターが生まれたわけですね。 東川:そうですね。

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