ラッパー千葉雄喜の驚くべき“真価”。「彼を推せば日本人が世界で戦えるようになる」と言える理由
一体KOHHのどこが凄いのか?
では、KOHHのどこが凄いのか? なぜ彼はここまで人を魅了できたのか? 完全に個人的な解釈であることを大前提にお話しします。 彼がHIPHOPの世界に足を踏み入れた当時、アメリカでは「トラップ」というサブジャンルが大流行していました。トラップは基本的に薬物の売買や使用がはびこっていたアトランタに生きる黒人たちのコミュニティによって出来上がったスラングですが、そういう環境の中で育ったラッパーたちが、自分たちの人生を赤裸々にラップするHIPHOPのサブジャンルの名前にもなりました。 異常な速さで打ち込まれるハイハットなど、一聴すれば一発でわかる独特なビートもトラップの特徴のひとつ。やんちゃなことを歌う曲のビートとしてぴったりと合い、それが格好良くて大流行したというのもあります。その独特なビートは「トラップビート」と呼ばれるようになり、KOHHは日本の中でも早い段階でトラップビートを取り入れて当時の日本のHIPHOPシーンが進む方向をシフトさせた第一人者なのです。 2010年代中盤頃にKOHHが出てきて以降、日本中でトラップビートに乗るラッパーたちが急増したのを今でも覚えています。KOHHの凄さには「日本のHIPHOPシーンを変えた功績が大きい」という点もあります。 リリックもかなりすごいです。彼のリリックを「小学生の作文みたい」だと多くの人が言いますが、それはディスりではなく、「小学生の作文みたいに単純なリリックだからわかりやすい」という感じで逆に褒めていて、一回聴いただけで内容が聴き手の耳にすんなり入ってくるのです。 さらに、KOHHはある時期から曲のラップを、スタジオに入ってから即興で録音しているらしいのです。本人も「事前にリリックをちゃんと考えて描くと、色々凝りすぎてダサくなってしまう。即興の方が粗削りで格好良い」と述べていますが、曲を聴くと即興だと思えないほどの完成度の高さで感動すらします。 KOHHは、当時日本ではまだ流行ってなかった最先端のトラップビートの上で単純なのに格好良いラップを乗せ、日本のHIPHOPシーンを変えたカリスマ性が高すぎるラッパーなのです。