「地方創生」への言及大幅増も…既視感強く 財政健全化もひと言だけ 石破首相所信表明
石破茂首相の29日の所信表明は、前回10月4日と比べ、地方創生に関する分量が大幅に増えた。ただ、従来の取り組みからどう加速するのかは見えずじまいだ。年収が103万円を超えると所得税が生じる「103万円の壁」対策など減税を宣言した一方、防衛力強化のための増税(防衛増税)には触れず、財政健全化の取り組みに後ろ向きな印象も残した。 【イラストで解説】政府・与党「年収の壁」見直しで年収2400万円超の基礎控除廃止・縮小を検討 「日本全体の活力を取り戻す」。このために首相が仕掛けるのが、自身のライフワークともいえる「地方創生の再起動」だ。 29日の演説では、方言を使ったユニークな地域の紹介動画や出生率上昇といった好事例を挙げ、「これらを決して一つの『まち』の物語にとどめてはならない」と訴えた。 デジタル技術活用や地域の利害関係者が知恵を出し合うといった施策もちりばめた。ただ、どれも既視感のある内容ばかりだ。 大和総研の神田慶司シニアエコノミストは「地方創生は10年前から同様の取り組みを続けているのに、成果が出ていない。それに対する答えがない」と指摘。地方自治体が行っている関連事業の進捗管理を国全体で把握するなど、これまでとは異なる仕組みの導入が必要との認識を示した。 政府が年内にまとめる地方創生に関する基本的な考え方で、そのビジョンをしっかり示す必要がある。 一方、首相は岸田文雄前首相の「経済あっての財政」の文言を今回も踏襲した。ただ、それに続く財政健全化に向けた決意は、「財政状況の改善を進める」のひと言にとどまった。(米沢文)