一周回ってこの秋は、ローテクなマウンテンパーカが着たい。
10月も半ばを過ぎると、さすがシャツ一枚では心許なくなる。いつもこの時期にはシャツの上から羽織るようなアウターを着ることが多いが、今年、個人的に着たいのがマウンテンパーカだ。 【この記事の写真を見る】 マウンテンパーカはいまや一般名詞のように扱われることも多く、どんなデザインのものでも、山で着られるようなものならば、「マウンテンパーカ」とジャンル分けされてしまうが、オリジナルがある。アメリカで1965年に創業されたシエラデザインズのもので、同ブランドのマウンテンパーカには「オリジナル60/40マウンテンパーカ(R)」という商品名のものがあり、タグにも「ORIGINAL 60/40 PARKA」と書かれている。 『MEN'S CLUB BOOKS Vol.10 アウトドア・ウエア』(婦人画報社)でイラストレーターの小林泰彦氏は「ヨーロッパ系の防風衣で、かつて日本でもウィンド・ヤッケという名で親しまれてきたものを、米国人が米国的につくり換えたのがこのマウンテン・パーカである。だからマウンテン・パーカの機能は、第一に防風であり、それに付随して身体の保護、身の回りの小物なの収納などの役目を果たす。 シエラデザインズがこのパーカを発明したのは60年代だが、日本で紹介されたのは小林泰彦氏が「ヘビーデューティー」と命名したアウトドアスタイルを提案した70年代も末の頃で、本物のMade in U.S.A.製品とそれに影響を受けたスタイルが日本で大流行した頃だと記憶している。
シエラデザインズがデザインしたマウンテンパーカでいちばんの特徴は、「60/40」、日本では「ロクヨン」または「ロクヨンクロス」と呼ばれた素材にある。同ブランドのサイトの説明をそのまま書くと「横糸に綿を約60%、縦糸にナイロンを40%の比率で織り上げた生地」で、「雨に濡れればコットンが膨張し、ナイロンを圧縮して雨の進入を防ぎ、乾けばコットンのナチュラルな通気性が衣類内を快適な環境に整える」ともある。 当時は、こんな画期的な素材はないと私は感動して、なんとしても入手したいとアメリカからこのマウンテンパーカを個人輸入した。 マウンテンパーカにはさらに特徴的なディテールがある。防風のために設計されているので、フードが付いているが、そこに「ドローコード」と呼ばれる調節用のコードが付き、シエラデザインズの場合はコードには革のパッチが付き、手袋をしたままでも締められるようになっているのだ。フロントにポケットは4つ。どれもベルクロ付き。ベルクロが珍しい時代に、本当に革新的に見えた。 ちなみに袖の調節もベルクロで行う。そして本体下のマチ付きのポケットの裏側にはハンドウォーマー付き。背中にもマップなどを入れる大型のポケットがあり、前後5つのポケットで、小さなザック並みの収納力があるというのがこのパーカの売りだった。フロントの開け閉めはファスナーとボタンのダブルで、ファスナーはYKKの#10というすごく頑丈なタイプが使われ、プルタブにもナイロン素材のドローコードが付いている。これも手袋をしたまま操作できるようにと考えられたものだ。 こうしたオリジナルの機能はシエラデザインズが考え、製品化したものだろうが、当時はいろいろなアウトドアブランドから同じようなパーカがリリースされていてた。素材も「ロクヨン」以外のものも使われ、デザインを少し買えたものも販売されていた。