「FR」「直6」「8速AT」と鳴り物入りで登場のになんで売れない? CX-60が販売不振に陥るワケ
CX-60の売れ行きは?
CX-60は、マツダの新世代ラージ商品群の第1弾となる上級LサイズSUVだ。後輪駆動のプラットフォームを使って、エンジンを縦置きに搭載しており、直列6気筒3.3リッタークリーンディーゼルターボも設定する。 【画像】マツダCX-60PHEVのフロントまわりの画像などを見る ボディスタイルは、エンジンを縦向きに搭載する後輪駆動車らしく、前輪とフロントピラー&ウインドウの間隔が開いている。その結果、ボンネットが長くなり、後輪駆動らしい運転の楽しさが外観にも表現されている。 パワーユニットは、直列6気筒3.3リッタークリーンディーゼルターボ、ディーゼルのマイルドハイブリッド、直列4気筒2.5リッターガソリン、2.5リッターガソリンを使ったPHEV(プラグインハイブリッド/充電可能なハイブリッド)になる。 CX-60の発売は2022年9月だ。発売時点で発表された国内販売計画は、1カ月当たり2000台であった。しかし2024年1~10月の1カ月平均登録台数は約570台だ。発売から約2年しか経過していないのに、売れ行きは販売計画の30%以下に留まる。 CX-60の販売が低調な背景には、複数の理由がある。まずマツダ車とあって、CX-5と比較されることだ。CX-5の現行型は2代目で、2016年12月に登場した。つまり発売から約8年を経過するが、2024年1~10月の1カ月平均登録台数は約1600台であった。CX-60に比べると、CX-5の設計は大幅に古いのに、登録台数は3倍近く多い。
CX-5に対してのアドバンテージがない
そこでCX-60とCX-5を比べると、全長はCX-60が165mm長いのに、車内の広さはあまり変わらない。たとえば身長170cmの大人4名が乗車したとき、後席に座る乗員の膝先空間は、両車ともに握りコブシ2つぶんでほぼ等しい。CX-60の全長がCX-5に比べて165mm伸ばされた内、100mm以上は後輪駆動の搭載により、冒頭で述べたボンネット部分の拡大に費やされたからだ。 そしてCX-5に直列4気筒2.2リッタークリーンディーゼルターボを搭載するXDスポーツアピアランスは、BOSEサウンドシステムなどを標準装着して価格は390万600円(2WD)だ。対するCX-60は、人気の高い直列6気筒3.3リッタークリーンディーゼルターボを搭載するXD・Lパッケージが422万4000円(2WD)になる。CX-60にBOSEサウンドシステムをオプション装着して、CX-5XDスポーツアピアランスと装備の水準を合わせると合計430万6500円に達する。 このように同等の装備を備えた状態で比較すると、CX-60の価格はCX-5に比べて約40万円高い。その代わりCX-60のディーゼルは直列6気筒3.3リッターで動力性能が高く、後輪駆動の採用でスポーティな運転感覚も味わえる。 それでも実用的にはCX-5で十分と考えるユーザーが多い。CX-5は前述のとおり全長が適度な長さで車内は広く、2.2リッターディーゼルの走りも満足できるからだ。直列6気筒エンジンと後輪駆動に価値を見い出せないと、CX-60はCX-5に比べて価格が割高で、売れ行きを低迷させた。 またCX-60は、峠道などでは機敏によく曲がるが、乗り心地は硬く感じられる。トルクコンバーターを採用しない8速ATは、走行状況によっては変速ショックが大きく思える。そして乗り心地や変速ショックは感覚的な性能だから、インターネットなどで「硬くて違和感がある」と話題になると、そこが過剰に意識されやすい。 このほかCX-60とCX-80の投入順位も悪かった。まず先にCX-80を投入して、後輪駆動のプラットフォームを使った高級SUVに位置付け、それに続いて同じメカニズムを使用したショート版としてCX-60を発売すべきだった。CX-60の内外装をさらにスポーティに作り込めば、短いボディと相まって、乗り心地が硬めでも不自然な印象は抱かれない。CX-5とのコンセプトの違いも曖昧にならず訴求できた。 開発者は「その方法は有効だったと思うが、実際には開発された順番で、CX-80の前にCX-60を投入した」と述べた。このようにCX-60は、さまざまな理由に基づいて売れ行きを下げた。
渡辺陽一郎
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