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【いわき震災伝承館】地域挙げ活用進めよう(6月20日)

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福島民報

 いわき市が薄磯地区に整備した「いわき震災伝承みらい館」が開館した。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の記憶と教訓を後世に伝える。震災と原発事故がもたらした困難と復旧・復興の歩みを発信し、地域の防災意識を高める役割も担う。施設をいかに有効に活用できるかどうかが、目的達成の鍵を握る。  津波で被災し、土地区画整理事業を実施した地域に建設した。地震、津波、原発事故と避難、復旧、復興の資料を時系列で展示している。複数の画面から当時の状況や復興の様子、震災で得た教訓を伝える語り部の映像が流れる。中央に、解体された豊間中から移設した黒板がある。震災は卒業式の日に起きた。生徒が残した「ありがとう」「だいすき」の言葉が胸を打つ。  展示室入り口に、震災関連施設の所在地を記した地図があり、自由に持ち帰れる。岩間地区の津波で壊れた防潮堤のモニュメント、豊間地区の慰霊碑など市内施設に加え、相馬市伝承鎮魂祈念館、双葉町に今秋開館する「東日本大震災・原子力災害伝承館」などが並ぶ。簡単な施設紹介とみらい館からの車での所要時間、連絡先の電話番号が記載され、訪問に役立つ。それぞれの施設のパンフレットやチラシも配置されている。

 有用な地図だけに、みらい館に限った配布ではもったいない。掲載されている屋内施設、さらには観光拠点や駅などにも置いてはどうか。  いわき市は防潮堤や海沿いの道路を活用したサイクリングロード「いわき七浜海道」の整備を進めている。今年度末に完成する全長五十三キロのコース沿線には、みらい館をはじめ地図に掲載されている十施設が点在する。サイクリングロードと施設案内を重ねた地図があれば、訪問者の増加につながるだろう。  新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、復旧・復興の歩みを発信する「ホープツーリズム」が、今年に入って相次いで中止されている。みらい館は一度の入館者を最大二十五人に制限し、マスクの着用と手指の消毒、検温を求めているが、県外から教育旅行などの団体ツアーを積極的に招くのは、現状では難しい。  県外に向けた発信の機会が限られるこの時期を、準備期間が長くなったと前向きに捉えよう。市民一人一人が足を運び、自分の住む地域の被災と復興の状況を確認してほしい。施設運営や語り部活動をしている人だけが伝承に携わるのではない。みんなが何らかの形で伝える役割を担ってこそ、つらい経験は将来に生かされる。(鈴木 俊哉)

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