『後継者難』の倒産が前年同期比1.5倍増の278件、最多更新が確実に(2020年1-9月)
代表者の高齢化で、事業承継が中小企業に大きな課題に浮上する中、2020年1-9月『後継者難』倒産は278件(前年同期比54.4%増)と、急増した。集計を開始した2013年以降、年間(1-12月)で最多を記録した2015年の279件を大幅に上回り、最多件数を塗り替えることが確実になった。 『後継者難』を要因とする倒産では、業歴は30年以上となる1980年代以前の設立(個人企業は創業)が135件(構成比48.5%)と、ほぼ半数を占める。業歴は長いが人材育成や社内の新陳代謝が遅れた企業が淘汰の荒波を受けやすいことを示している。 また、『後継者難』倒産は、代表者の「死亡」が119件(前年同期比21.4%増)で最も多い。以下、「体調不良」が96件(同57.3%増)と続き、この2要因で合計215件(構成比77.3%)と8割弱を占め、高齢化と健康不安が最大の経営リスクになっている。 中小企業では、代表者が営業や経理の責任者を兼務することも少なくない。これが情報共有に障害となり、後継者候補などブレーンも育ちにくい要因になっている。そのため、代表者などの急な死亡や病気に直面すると、たちまち事業継続が困難に陥りやすい。代表者の高齢化は、業績悪化に拍車が掛かりやすく、業績が厳しい企業ほど後継者が見つからない「負のスパイラル」にはまる。新型コロナ感染拡大の収束が見えないなか、中小企業の「社長不足」は、倒産だけでなく、廃業を加速する可能性も高いだけに、動向には注意が必要になっている。 ※本調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2020年1-9月での「後継者難」倒産を抽出し、分析した。
◇1-9月 過去最多の278件 2020年1-9月の『後継者難』倒産は278件(前年同期比54.4%増)で、前年同期(180件)の1.5倍増と急増した。集計開始の2013年以降、年間最多となった2015年の279件を上回るのは確実で、年間300件を大幅に上回る可能性も視野に入っている。 2020年1-9月の全国企業倒産は6022件(前年同期2.4%減)と、前年同期を下回っている。 リーマン・ショックや東日本大震災による中小企業の支援策で企業倒産は抑制されていたが、2019年は人手不足に伴う人件費上昇などが企業収益を圧迫、倒産は増加に転じた。そこに新型コロナ感染拡大が襲い掛かったが、政府の支援策が奏功し、再び企業倒産は小康状態になった。 しかし、『後継者難』倒産が急増をたどる背景は、代表者の高齢化や、新型コロナで事業意欲の低下などが大きい。全倒産に占める割合は、2013年1-9月は2.1%だったが、2020年同期は4.6%に拡大した。 中小企業の後継者の有無は、金融機関の「事業性評価」でも企業の存続可能性を判断する上で、業績や財務状況と同様に重要視されている。