長男の小児がんの治療のため、ダウン症の妹を実家に預け通院する日々…。脳腫瘍の摘出、化学療法、過酷な治療が続く【小児髄芽腫体験談・医師監修】
今は元気に学校に通う小学6年生に
小学2年生の4月からの9カ月の闘病期間、入院前には22kgあった慶一くんの体重は、16kgまで減ってしまっていました。 「退院してからは、食事を普通にとれるようになりましたが、そのあとの体重の戻りはとてもゆっくりでした。息子の体重がやっと入院前の状態に戻ったのは小学4年生のころでした。 治療の影響で、成長ホルモンの分泌が少なくなっているために、今は毎日成長ホルモンの注射をしています。脳腫瘍については年に数回、定期的に検査通院をしていて、今のところ再発が見つからない状態が続いています。 息子は今、普通に小学校に通っています。今の息子の様子を見ると、すっかり元気で、大きな病気を患ったことを思わず忘れてしまいそうになりますが、今も安心はできません。毎日の注射や通院など、見た目ではわからない部分での心配は、これからも続くのだろうと思います」(広美さん)
【栁町昌克先生から】小児がん治癒後の晩期合併症や社会の受け入れも課題に
小児がんに対する治療法は抗がん剤治療、手術、放射線治療、支持療法などいろいろな分野で年々進歩してきています。しかし、成長・発達過程にあるお子さんの体に相当な負担がかかる治療であることも事実です。小児がんが治癒したあとにも、遅れてさまざまな問題が発生します(晩期合併症)。病気の再発はないか? 晩期合併症はでてきていないか? 長く過酷な入院治療が終わったあとも、小児がんのお子さんやご家族には、定期的な検査や社会からのサポートが必要です。 お話・写真提供/中山広美さん 監修/栁町昌克先生 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部 小児がんの闘病は、子どもを支える親にとっても生活が一変する大変なことです。広美さんは、全国で15カ所しかない小児がん拠点病院である神奈川こどもが自宅近くにあったこと、夫婦の両親が近くに住んでいて下の子の世話などフォローしてくれたこと、新型コロナウイルスの拡大で在宅勤務で仕事が続けられたことなど、「私たちは、恵まれた環境に助けられた部分もあったと思う」と話してくれました。 「 #たまひよ家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指して様々な課題を取材し、発信していきます。
栁町昌克先生(やなぎまちまさかつ)
PROFILE 神奈川県立こども医療センター 血液・腫瘍科 部長。横浜市立大学医学部卒業。2020年から神奈川県立こども医療センター血液・腫瘍科に勤務。小児がん患者と家族を精神的、経済的側面から支援するボランティア団体「ちあふぁみ!」の代表を務める。 ●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。 ●記事の内容は2024年10月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
たまひよ ONLINE編集部
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