京都大右腕 阪神2軍との“ドラフトテスト”に負けたけど合格?
ネット裏には、京大初のプロ野球選手をターゲットに7、8球団のスカウト連中が並んでいた。数名で陣取った楽天は、佐々木戦略室長まで顔を見せていた。楽天のチーム統括 本部スカウト&ディベロップメント部副部長である福田功氏は「投げっぷりがいいね。腕が振れているし、今日はカットボールが切れていた。ここから体ができてくれば、もっと楽しみが増える」と絶賛。北海道日ハムの加藤スカウトも、「序盤は少し緊張感があったんだろうけれど、ストレートに力があってピッチングができるのが魅力。もちろん即戦力としてみています」と言う。 特に熱心だったのは、このドラフトテストの舞台を用意した阪神である。ブース席には、中村GMを筆頭に佐野スカウト部長に担当の池ノ上課長が勢ぞろいしていて、5回終了後には、GM会見まで設定されていた。 そもそも、この交流戦が実現したきっかけは、3年前に、全京都大学野球トーナメントの20周年記念に阪神の吉田義男元監督が記念講演及び始球式に呼ばれたこと。その企画をした京大の寶馨・監督と「京大も強くなってきたのなら一度、阪神の2軍と試合をしましょうか」と盛り上がったのがスタートだ。田中というドラフト候補が出てきたため、昨年の夏に「田中がプロ志望をあきらめていないなら」という条件付きで具体化。田中が、プロ志望の考えを捨てていなかったため初の京大―阪神2軍のプロアマ交流戦が実現したのである。 交流戦の実現のため裏で奔走していた阪神の池ノ上スカウト課長が言う。「田中は、いいところを見せようと序盤は力んでいてストライクゾーンが狭くなっていたね。プロは甘いボールは見逃さない。でも3回以降は修正してまとめた。価値のある内容だったと思う」。 田中が高校生なら特Aのドラフト1位候補であることは間違いない。ただ進学校の白陵高校―京大と、野球においては名門でないところで7年を過ごしたため、フィジカルは鍛えられておらず線が細い。下半身はできていない。京大のキャッチャーの肩の問題もあるが、クイックモーションなど細かい技術も取得ができていないため、この日も5盗塁を許した。腕っぷしと頭だけで148キロとスライダー、カーブ、チェンジアップ、カットボール、フォークの変化球まで自在に操るのは、ある意味、脅威的だが、1シーズンを戦う大学卒の即戦力としては、まだ物足りなさを感じる。 そのあたりの疑問を池ノ上スカウト課長にぶつけると、「京大という環境でやってきているハンディはある。1、2年鍛える余裕がプロのチームにあるかどうかだが、伸びしろの可能性は凄い。今の段階で、あれだけのボールを投げることができるんだからな。なんとしても欲しい選手だ」という答えが返ってきた。