清武英利さん「あなたが書くべきだ」と言われた 住管機構の回収部描く著書がドラマ化 17日スタート、WOWOW「トッカイ」
俳優伊藤英明(45)主演のWOWOW開局30周年記念「連続ドラマW トッカイ ~不良債権特別回収部~」(日曜午後10時)が17日から放送される。バブル崩壊後、6兆円を超す不良債権をしたたかな借金王らから回収にあたる組織のサラリーマンを描く。原作の同名ノンフィクション(講談社文庫)の著者はかつて読売巨人軍首脳ながら一人反旗を翻した「清武の乱」の清武英利さん(70)だ。「彼らも私もそう生きることしかできなかったという共通点を感じる」(竹島勇)
1996年、経営破綻した住宅金融専門会社(住専)の不良債権取り立てを目的とした国策会社「住宅金融債権管理機構」(住管機構、後の整理回収機構)。トッカイは、その最前線で任務に就く特別回収部の通称だ。 山一證券が97年に破綻した際、最後まで会社に踏みとどまり、真相究明と精算業務を続けた傍流の社員たちを描いた「しんがり 山一證券 最後の12人」(講談社文庫)がある清武さんに友人が「住専を覚えているか。あなたが書くべきだ」と言われたのがきっかけ。「記者時代から気になっていた痛いところを突かれた」という。事実を確認し、当事者と家族らの証言も集め実名で書く。執筆は3年半に及んだ。 清武さんは「機構は将棋会社。社員は取り駒」という元役員の言葉にうなった。かつて貸し付けた側で破綻した住専の元社員を機構が雇用し、今度は機構の駒として借り手からの返済に当たらせる。「効果的で非情なシステム」と断じながらそこで生きる選択をした無名の人たちに共感した。 「日の当たらない人で自分しか書けないことをテーマに続ける」と言い切り「事実をあたかも小説のように感じさせる」。 「ドラマの志は私と同じ。主役の伊藤さんは悲哀の表現が良く、イッセー尾形さん演じる借金王の怪演はこんな場面があったと感じさせる」 清武さんは巨人軍の経営にあたっていた2011年11月に記者会見を開き、親会社の読売新聞グループ本社の渡辺恒雄会長・主筆(当時)による巨人軍への不当な人事介入があったとする告発を行い、解任された。それは組織人を描くことに影響しているのか。「権力者に異を唱えることは大事。おかしいということはおかしいと言って組織を離れ、それが貧乏くじとは思わない。そこはトッカイの人物と同じ」 かつて対立した94歳で読売新聞グループ本社代表取締役主筆を務める渡辺さんへ今、言いたいことを問うと「お元気でがんばってください、と言うだけ」「お辞めになるなら早くお辞めになるべきだった」とさらり。プロ野球への関心は持ち続けていて「球団経営はまだアメリカに遅れている。革新すべきことが多い」と指摘した。 ◆清武英利(きよたけ・ひでとし) 1950(昭和25)年10月12日生まれ、宮崎県出身。75年読売新聞社入社。社会部記者として警視庁、国税庁などを担当。名古屋市の中部本社(現中部支社)などを経て、「清武の乱」で読売巨人軍専務取締役球団代表兼GM・編成本部長・オーナー代行を解任され係争に。ノンフィクション作家として著書に「石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの」(講談社文庫)、「サラリーマン球団社長」(文芸春秋)など。 ◆「連続ドラマW トッカイ~不良債権特別回収部~」 銀行からトッカイに入り、債権回収に奮闘する主人公に伊藤、部下に中山優馬(26)、広末涼子(40)、萩原聖人(49)、矢島健一(64)。組織のトップの有名弁護士役を橋爪功(79)。悪質な借り手はイッセーや仲村トオル(55)。
中日スポーツ