おいてけぼり~9060家族~ 35年間ひきこもる女性 支えた父の突然死 抜け出せない“疎外感”
2019年、家族が高齢化し80代の親が子を支える「ひきこもり家族の高齢化問題」、いわゆる「8050問題」がクローズアップされました。「ひきこもり」は家からまったく出ない人のことだけではありません。内閣府などによりますと、ひきこもりの定義には、たとえ家から出ても、家族以外との交流がほとんどない状態やコンビニや趣味以外に外出しない状態が半年以上続くことも含まれます。中高年(40~64歳)のひきこもり当事者数は約61万人。若年層(15~39歳)の約54万人を上回ります。 「人と社会が怖い…」自宅に引きこもって35年の女性が言いました。 抜け出したくても抜け出せない、「まだまだ自分はおいてけぼり…」ひきこもる中高年の苦しみの告白でした。 本記事では、あるひきこもり女性と家族の記録を通じ、社会が放っておけば8050問題では済まずにいつか“9060問題”になりかねない現実に警鐘をならし、8050問題をどうやったら解決できうるのかを考えます。
■唯一の生きる支えだった“父の死”
愛知県の市営団地で91歳の父、63歳の兄と暮らす敬子さん(52)は、4人兄弟の末っ子です。「人と社会が怖い」…昔から話すことが苦手でした。専門学校を中退し、パートで勤めていた工場も2年で辞めさせられ、18歳からひきこもっています。実はこの家にはもう1人のひきこもりが。63歳の長男も、ケガで仕事を辞めてから10年間、パチンコ店と家を往復するだけの日々が多くなっていました。 そんな敬子さんと長男の面倒を見るのは一緒に暮らす父。77歳のときに妻に先立たれ、掃除洗濯など家事全般を含め1人で家族を支えています。 父は、高齢になっても子供の面倒を見なければいけない生活に時々嫌気がさすこともあります。しかし、18万円ほどの年金で家族の生活費をまかない、自身の年金の一部を敬子さんの将来のために貯金するなど、1人で子供の生活を支え、子供の将来を案じつづけてきました。敬子さんは父なしでは絶対に生きていけない状況でした。