「スタバに通うイケてる私」に刺さらなかった…スタバ「紙ストローやめます」宣言がSNSで絶賛される本当の理由
スターバックスが紙ストローからバイオマス素材のストローへと順次変更していくことを発表し、SNS上で大きな話題となった。桜美林大学准教授の西山守さんは「他のカフェチェーンや飲食店も環境保護対策を講じてきたが、スタバだけがこれだけ取り上げられるのには理由がある」という――。 【写真】ドトールグループ店舗で使用する厚紙マドラー ■スタバの「紙ストロー廃止」に称賛の声 12月6日、カフェチェーン大手のスターバックスコーヒージャパンは、紙ストローを順次バイオマス素材のプラスチックストローに変更していくことを発表した。2025年1月から沖縄県の32店舗で導入され、3月から全国に拡大される予定だ。 同社は2020年から紙ストローを取り入れている。紙ストローが導入された背景には、マイクロプラスチックによる環境汚染の問題がある。プラスチックごみを減らす取り組みの一環として、プラスチック製ストローから紙ストローへの転換が進められたのだ。 スターバックスに限らず、日本マクドナルドも、2022年10月から紙ストローと木製カトラリーの提供を開始。2023年にはサイドサラダの容器を紙製に変更している。 2022年4月1日には、「プラスチック資源循環促進法」が施行され、飲食店やコンビニにストローやハンガーといった使い捨てプラスチック製品12品目の使用量を削減することが求められるようになった。 今回の発表を受けて、SNS上では「紙ストローは本当に無理だった」「久々にスタバに行く気になった」などと廃止を歓迎する声であふれ返った。 実は、飲食店における紙ストローの廃止はスターバックスが初めてではない。にもかかわらず、紙ストローの廃止でこれほどまでに話題になったのはスターバックスが初めてのように映る。いったいなぜスタバだけがこれほどまでに紙ストローの廃止に沸き立ったのか。
■紙は評判も悪くコストもかかる そもそも、「紙ストローの廃止」は時代の流れに逆行しているようにも見えるのだが、どうしてこのような判断がなされたのだろうか? スターバックスに限らず、紙ストローは利用者から評判がよくなかった。実際、導入直後から、SNSには下記の声が見られていた。 ・プラスチックストローと比べておいしくないように感じる ・時間が経つとふやけてしまう ・環境負荷の軽減にどのくらい有効か疑問 筆者もスターバックスやマクドナルドを利用して、同様の感想を抱いていた。企業側にしても、紙はプラスチックよりコスト増につながるというデメリットがある。そうしたことを考え合わせると、紙ストロー廃止は、妥当な流れと言えるだろう。 ■「環境意識の高いスタバを使う私」に受け入れられなかった これまで、スターバックスは環境対策だけでなく、SDGsの流れに沿って、多くの社会的な取り組みを行ってきた。 ---------- ・フードロス削減のための時間限定割引の導入 ・マイボトル・タンブラー割引の導入 ・環境に配慮した店舗づくり ・多様な人材の受け入れと尊重 ・フェアトレードへの取り組み etc. ---------- こうした取り組みの多くは利用者にも受け入れられているし、「社会貢献に積極的な企業」として、スターバックスのブランド価値の向上にも大きく貢献している。また、これが実現できているのは、意識の高い顧客の存在がある。スターバックスの顧客は、店内でPCを広げて仕事をしたり勉強をしたりしている人が目立つが、向上心だけでなく、環境意識も高い傾向がある(最近はその傾向は弱まっている感もあるが)。 スターバックスが実施している社会的取り組みは、「スターバックスを利用している私は環境意識が高い」という顧客の社会的価値に転換することによって受容されてきたとも言えるが、紙ストローに限っては、そうとも言えなかったようだ。 利用者は、自分たちが得ている便益を捨ててまで、プラスチックごみ削減に貢献したいとまでは考えていなかったのだ。