福山哲郎議員が語る、3年間の浪人時代が教えてくれたもの「やっぱり現場に立ち続けることが大事」
『月刊エンタメ』に連載中の「井上咲楽の政治家対談」、今回は立憲民主党幹事長を務め、外務副大臣や内閣官房副長官などを歴任してきた福山哲郎議員が登場。現在の議員生活にも活きる落選時代の経験とは。 ※取材は10月12日に行いました 【写真】福山議員が取材後にプレゼントしてくれた自身のキャラクター「テツロー」をあしらったグッズ 福山 僕は初めての選挙(96年の衆議院選挙に旧民主党公認で出馬)のとき、負けているんですよ。そこから3年間の浪人時代が続き、その間、本当に支援してくださる方々の愛情、頑張れよという気持ちがありがたかったのを覚えています。政治家にとって落選の経験は、非常に大きな財産になると思います。 井上 つらいなあ……というお気持ちは? 福山 それは、かなりつらいですよ。だってね、次の選挙で勝てると決まっているわけではないですから。僕なんか貧乏でしたから、地盤も看板も鞄もない状態。本当にマイク1本持って、街中に立ち、政治活動を始め、事務所は借りもの、電話とFAX、移動の車はもらいもの、本当に何もありませんでした。そんな状態のスタートで、1日に1人でも事務所に支援者の方が来てくださったら、うれしいな。そんな目標を持ちながら、街頭演説をしていました。 井上 そうなんですね。 福山 もちろん、最初は誰も聞いてくれません。でも、毎日続けていると、だんだんね。たとえば、朝の通勤の前に電柱の陰に立ち、聞いてくれる人が現れたり、バス停でバスを待っている人たちの中で、ちょっと目で合図をしてくれる人がいたり。1年くらいたったある日には、タクシーがばっと目の前で止まり、なんだろう? 怒られるのかな……と思ったら、運転手さんが「おまえ、いつも頑張ってんな」と握手とともに500円玉を握りしめさせてくれて。そうかと思えば、夕方の街頭演説中に自転車に乗ったおばちゃんが、「今買ってきたんやで」とスーパーの惣菜を差し入れしてくれて、「頑張りやー」と。 井上 優しいですね。
現場に立ち続けることが大事
福山 政治活動って地味でつらいことも多いですけど、有権者とつながるうれしさ、心と心の触れ合いのドラマがいくつも起きるんですよね。だから、やっぱり現場に立つこと。立ち続けることが大事だと思います。 井上 現場が大事なんですね。今はコロナの影響で「現場」の取り扱いがとても難しいですよね。選挙活動も変わっていきますか? 福山 そう。つらいですよね。集会をやって、そこでクラスターが発生したなんてことになったら、大きな迷惑をかけることになります。だからといって、リモート開催で本当に大事なことが伝わるのか。もちろん、一定は伝わると思いますが、直接、目を見てお話することでこそ、通じる部分もあると思うので。本当にコロナ禍での選挙活動、政治活動は難しくなっています。 井上 私も前回の参院選のときは全国50カ所くらい取材に周りました。目で見て感じた部分がたくさんあったので、この先、皆さんはどういうふうに活動されていくのかなと気になっています。 福山 50カ所も、すごい。たとえば、街頭演説は屋外ですし、距離があるわけですから、マスクをしてマイクを持てばいけますよね。ですから、やっぱり焦点となるのは集会ですよね。30、40人規模の小さな集会では、入り口で皆さんに検温と消毒に協力してもらい、マスクをつけてもらって、座席の距離を離して感染対策をしています。ただ、規模が大きくなったときにどうか。選挙活動では、会場が盛り上がり、ワーッなって「頑張ろう!」という機運が高まると、感染リスクも少し高まりますから。いつ総選挙があるかはわかりませんが、感染のリスクを避けながら、いわゆるリモートとは違う、現場感のある、ダイレクトに気持ちや内容を伝えるやり方を模索していきたいと思います。 (取材・文/佐口賢作) ▽井上咲楽(いのうえ・さくら) 1999年10月2日生まれ、栃木県出身。A型。『アッコにおまかせ!』(TBS)、『おはスタ』(テレビ東京)、『サイエンスZERO』(NHK Eテレ)などに出演中。 Twitter:@bling2sakura ▽福山哲郎(ふくやま・てつろう) 1962年1月19日生まれ。立憲民主党所属参議院議員。同志社大学、京都大学院卒。大和証券を経て、松下政経塾に入塾。1998年、参議院議員に。現在は立憲民主党幹事長を務める。
月刊エンタメ編集部