AIを活用したセキュリティは何を変えるのか? 「知的なデータインフラ」構想に迫る
ストレージベンダーの米NetAppが、生成AI活用とセキュリティ対策のサービスに注力している。生成AI活用では、Google Cloudとの連携を強化。Googleが提供する生成AIツール「Vertex AI」と提携する。これにより、企業の検索拡張生成(RAG)の運用を円滑にし、生成AIによって自社データをクラウド上で運用することを容易にする狙いがある。 【写真を見る】チーフ テクノロジー エバンジェリストを務める神原豊彦さん セキュリティ対策では、ランサムウェア対策を徹底的に進めるという。ランサムウェア感染の検出にもAIを活用し、精度と速度を向上させる。近年、日本企業を標的にしたサイバー攻撃が相次いでいる。ランサムウェアによってデータが暗号化され、身代金を要求される企業があとを絶たない。KADOKAWAのように長期のサービス停止に追い込まれた例も出てきている。 これ以外にも、同社は今後AIを活用したサービスや、30以上の新製品・新機能を提供していく。その狙いについて、同社日本法人ネットアップの中島シハブ・ドゥグラ社長らが事業戦略説明会でプレゼンした。
日本企業のAI推進は19% 課題は?
ネットアップの2023年の調査によると、AIプロジェクトが「既に進行中」あるいは「進行する予定がある」と回答した企業の割合は、グローバルで49%に対し、日本は19%にとどまったという。これは見方を変えれば、日本企業には81%の成長の伸びしろがあるということだ。同社は日本のAI市場の今後の可能性に注目しているという。 中島社長は「日本は他にも多くの産業分野で国際的に優れた技術・知識を有する産業が多く存在しています。このような企業に当社のAIインフラのノウハウをよりシンプルに提供できれば、今後もっとイノベーションが加速するはず」と期待する。 だが、そのためにはさまざまな課題が日本企業にはあるという。同社のヒアリング調査によると、まず、急増するITとデータ需要に対する、企業が投資する予算が足りない点を挙げた。ここには、データセンターの消費電力が増大する維持費の問題もあるという。 AI活用を進めたくても、そのノウハウがないという問題もある。「データのサイロ化」によって、各社内システム間の連携がしにくくなっている点や、サイバー攻撃の脅威が増加している点を課題に挙げる企業も少なくないという。 中島社長は「中でも一番多かった課題がセキュリティ。現在ビジネスが長期間にわたって停止する最大の理由が、サイバー攻撃」だと指摘する。 このような顧客の課題を解決するために、同社が新たに掲げているコンセプトが「インテリジェントなデータインフラストラクチャ」(Intelligent Data Infrastructure、知的なデータインフラ)だ。「Intelligent Data Infrastructure」は、顧客の課題を解決することを主目的としていて、これにより顧客のDXとAI導入を加速させ、ITインフラへの変革を支援する考え方だ。そのためIntelligent Data Infrastructureはネットアップ1社が推進するものではなく、400社以上の国内パートナー企業と、5000人を超えるネットアップの技術者のコミュニティーと共に推し進めていくという。 「このコンセプトを実現するために、3つの施策を考えています。1つ目は新製品の国内市場への投入。2つ目はIntelligent Data Infrastructureを理解してもらうための施策です。3つ目はパートナー戦略です。Intelligent Data Infrastructureを実現するために、今年30以上の新製品をリリースしました。当社の歴史でもこれほど多くの製品を一度にリリースした例はありません」(中島社長) この30以上の新製品に共通して強化したのが、ストレージの信頼性の向上だ。特にランサムウェア攻撃の検出と復旧を実現している。パブリッククラウド上に生成AIを実装させやすい環境も提供。企業のコストを最適化したクラウドストレージサービスも提供しているという。