「失われた時を求めて」個人全訳、鈴木道彦さん死去…金嬉老事件では裁判支援
マルセル・プルーストの大作「失われた時を求めて」を個人全訳した仏文学者で、独協大名誉教授の鈴木道彦(すずき・みちひこ)さんが11日、慢性心不全で死去した。95歳だった。告別式は近親者で済ませた。
東京生まれ。留学先のパリでアルジェリア戦争を経験し、政治と文学の問題を考えるサルトルの思想に関心を深めた。
1996年から「失われた時を求めて」全13巻の個人全訳の刊行を始め、2001年に完結し、翌年、読売文学賞を受賞。10年にはサルトルの代表作「嘔吐(おうと)」の新訳を出版し、正確で明快な訳文が高く評価された。
1968年に起きた金嬉老事件の裁判支援など、社会的活動でも知られた。著書に「アンガージュマンの思想」「越境の時」など。