葛飾区・四つ木白髭神社の鳥居脇にひっそり佇む富士塚【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド】
東京23区内、特に山手線の内側はビル街や飲食店街、住宅街ばかり。そう思っている人が多いかもしれません。でも、目を凝らせば東京都心にも「山」はあります。そんな東京の山の世界を、日本で唯一のプロハイカーである斉藤正史さんが案内します。 【写真9枚】登山口(最寄り駅)は京成電鉄四ツ木駅。四つ木公園、日向小次郎の銅像、四つ木白髭神社など登山道を写真で見る FILE.84は、葛飾区の四つ木富士です。
第84座目「四つ木富士」
◆今回の登山口は、京成電鉄四ツ木駅です 今回の登山口(最寄り駅)は、初めて降りる京成電鉄四ツ木駅。下車して驚いたのは「キャプテン翼」、通称「キャプ翼」が駅周辺のそこら中にいたことです。 僕は「キャプ翼」ドンピシャ世代です。小学生の頃、秋田に住んでいてサッカーをやっていました。秋田県でも強豪のチームで、秋田選抜に選ばれる人も何人かいるほどの強豪チーム。土日も休みなく毎日暗くなるまでボールを蹴っていました。そんな時、「キャプ翼」を見て心踊ったものです。練習の合間に立花兄弟(秋田)の“スカイラブハリケーン”にチャレンジしたりと、小学校高学年は宿題そっちのけで、サッカー漬けの毎日でした。四ツ木駅に降り立ち、そんな遠い昔のことが蘇ってきたのでした。 それにしても、なぜ四ツ木駅で「キャプ翼」?確か「キャプ翼」の舞台は架空の街だったような…と調べてみると、作者の高橋陽一先生の出身地が四つ木なんだそうです。なるほど納得です。 さっそく四ツ木駅登山口を出発。線路沿いに歩いていくと工事中の壁にも大きく「キャプ翼」の絵が!ここまで徹底してすごいなと思いながら線路方向から、まずは四つ木公園へ向かいました。 ◆地元で人気の老舗と住宅街の名店を発見 四つ木公園入り口に、なんと日向小次郎の銅像が!でも、僕が記憶している小次郎君とこの銅像はは少し違うような気もします…。 ともかく、せっかく公園に来たのなら小高い丘を縦走すべし。ということで、大型の滑り台まで縦走し、公園をトラバースして出口へ。ここからは、何か書けるようなネタが見つかるのか、いろいろ未知数の住宅街が始まります。 住宅街を一度抜け、まいろーど四つ木商店街に出ると、向かい側になんともオシャレなベーカリーを発見しました。創業1954年(昭和29年)の老舗パン屋「長楽製パン」です。今年で創業70周年で、地元の方々に愛されていて、懐かしいパンが揃っているそうです。特にコッペパンが人気で、店内にはイートインスペースもあります。山行の合間に一服するのもいいですね。 再び住宅街の中を進んでいきます。すると、偶然にも見つけたのが炭火手焼きせんべい専門店「掛矢」でした。なぜこんな住宅街にポツンとあるのだろう。残念ながら僕が通った時、お店は閉まっていました。あとで調べてみると、なんと、掛矢の店主さんは、ミュージシャンのようです。 ユーチューブチャンネルもあって色々なユニットで活動されているみたいでした。せんべいとロック。なんとも不思議な掛け合わせです。おせんべいはネット購入もできるそうですので、興味のある方はぜひ! さらに住宅街を進んでいくとイトーヨーカ堂が見えてきてホッとしました。地図上では、ここまで来ると目的地の四つ木白鬚神社はすぐ目の前です。ぱらぱらと雨が降り出しましたが、撤退するほどの雨でもありません。さらに先に進みます。 すると、ようやく神社がありそうな背丈の高い木々が見えてきました。と安心したのもつかの間、神社に入ろうとしたら、その手前には駐車場があり、神社へ続く道がありません。キョロキョロ見渡しますが、どうやっても神社には入れそうもありませんでした。もどかしい! しかしこれは東京で山を巡っていると、あるあるなのです。仕方ないので、ぐるっと回って正面入り口を目指すことにしました。ほぼ反対側まで歩くと、そこにようやく四つ木白髭神社が現れました。 ◆ようやく到着、四つ木白髭神社 ・四つ木白髭神社 四つ木白髭神社は、1654年(承応3年))四つ木村が立石村から分村したとき、同村の鎮守として勧請されたと伝えられています。江戸時代には「葛西の客人(まろうど)大権現」として江戸市中から多くの参詣者が訪れたと伝えられています。客人(まろうど、まらひと)とは、元来は稀に来訪する神さまの意味で、神さまを丁重におもてなしすることが福を授かることに通じます。1848年(嘉永元年)造営の社殿は1993年(平成五年)に瓦葺きから銅板葺に回収されたそうです。境内に南葛八十八ヶ所霊場第44番札所があります。 ・四つ木富士 知らずにす通りすぎました 今回の目的の富士塚を探すべく、四つ木白髭神社の本殿を左手に進んでいきます。が、富士塚らしきものも、浅間神社らしきものもありません。もしかして反対側かと右手に回り込んでみるものの、何かが壊された形跡しかありません。もしかしたら、富士塚が取り壊されてしまったのかも…。諦めかけていると雨脚が強くなってきました。神社入り口にある建物の軒下で雨宿りしながら、もう一度、四つ木富士の情報を確認します。あれ?…ひょっとして、あの目の前にあるのが富士塚か? 結論からいうと、四つ木白髭神社の鳥居をくぐったすぐ左側に目的の富士塚がありました。台座のようなものはなく、知らなければ石碑として見過ごすようなものです。あとから分かったことですが、以前は入り口付近に富士塚と池があり、池の側には弁天様もまつられていたそうですが、1965年に取り壊されて現在の形になったそうです。ちなみに「四つ木富士」は仮称だそうです。 ちなみに、四つ木白髭神社の例祭は2024年5月に6年ぶりに開催されたそうです。例祭では、神輿渡御や獅子舞、神楽が催され、数多くの出店で賑わうようです。 今回は、山行プラス「キャプ翼」聖地巡礼のような形になり、個人的にはとても楽しい1日を過ごすことができました。山だけでも十分に張り合いがありますが、プラスαの面白い発見や出会いがあると、やはり足取りも軽くなります。 次回は葛飾区の鎌倉富士です。 私が書きました! プロハイカー 斉藤正史 2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。
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