引きこもりの長男が「母の資産」を独占、遺言書作成まで迫り…【相続のプロが解説】
勤勉だった会社員の兄は、仕事でトラブルを起こしてから引きこもり状態に。心配した両親は貯金に励みますが、父親が亡くなって以降、母親の財産を好き勝手に使いはじめました。弟は苛立ちますが、じつはそれ以上に、母親と兄の将来に不安を感じています。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。
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仕事につまずき、引きこもりになってしまった長男
今回の相談者は、50代会社員の山田さんです。高齢となった母親の相続をはじめとする、家族の問題に頭を痛めているということです。 山田さんの母親は80代ですが、心身ともにしっかりしています。いまは埼玉県の自宅で、60代になった山田さんの兄と同居しています。 山田さんの兄は、高校卒業後に地元企業へ就職したものの、30代のときに仕事で大きな失敗をしてしまい、退職。その後に何度か転職しましたが、うまくなじめず、以後はずっと自室に引きこもっている状態です。家族間の会話もほぼありません。 父親は10年以上前に他界しています。父親の相続の際、預貯金はすべて母親が、実家の家と建物は、母親と兄の1/2の持分として名義を書き換えています。山田さんは何も相続していません。 父親は大手企業の部長職で、給料も年金もかなり高額でした。両親は山田家の長男である兄の将来を心配し、かなり倹約して預金を残したようです。家は築古ですが、こまめにリフォームをしており、外観も機能性も問題はありません。
父亡きあと、兄は好き勝手に振舞いはじめ…
山田さんは母親の預貯金を心配しています。父親亡きあと、兄は母親のクレジットカードで買い物を繰り返すなど、貯金を好き勝手に使っています。母親はしきりに山田さんに不満をこぼしますが、山田さんがカードの解約などをアドバイスしても行動せず、結局は兄のいいなりです。 「私には仕事があり、妻子もいます。自宅も買いました。ですから、兄に実家を渡すのは構わないのです。しかし、預貯金についてはどうなのでしょうか。兄を心配した両親が、生活費を削って積み上げたお金です。昔は同情したときもありますが、いまは自分勝手な兄に怒りを感じます。あんまりではないでしょうか」 しかし、山田さんの怒りの理由はそれだけではありませんでした。 「この間、また母親から電話がありまして。とうとう兄に遺言書を書くよう迫られ、書いてしまったというんです。でも、内容を聞くと〈それは教えられない〉と。そんな話ってありますか? 母の財産ですから、母が納得しているなら仕方ありませんが、それでも、今後の生活があるわけです。少なくともいまの資産状況や遺言書の内容は、私にも知る権利があると思うんです」 山田さんが強い不満を抱いていることは明らかでした。 山田さんは母親の資産状況も遺言書の内容も知らされず、一方の兄はすべての情報を握っています。兄とは電話ですら話ができないというなか、事前に打つ手はないかと筆者のもとを訪れたとのことです。