ロッテ打線の謎 最多491四球が示した攻撃力
貧打線と言うなかれ! ソフトバンクと優勝争いを演じるなど、2020年のパ・リーグを盛り上げたロッテだが、打線を見れば3割打者は不在で、チーム打率は12球団で最下位。さらに得失点差はマイナスと、リーグ2位躍進を果たしたチーム成績とは思えぬ数字が並んだ。だが、その中で突出する数字が四球だ。安打ばかりが打撃ではないことを、“全員野球”で証明している。
好球必打の証し
猛打をふるう強力打線ばかりが、勝利を呼び込むわけではない。2020年のロッテ打線が、ひとつの“攻撃の在り方”を示している。【表1左】のとおり、チーム打率はリーグ最下位の.235で、規定打席に到達打者の中でのチーム首位打者は中村奨吾の.249と、3割打者は不在だった。それでも、シーズン計461得点と打率上位球団に引けをとらなかったのは、リーグ最多491四球をもぎとったことが大きい。
実際にナインも「安打も四球も“出塁すること”に変わりはない」と口々に語るなど、選球の意識は高く、この言葉どおりに四球と安打の扱いを同じとし、2つの数字を足してみると【表1右】のようにリーグ3位の数字に。四球を安打と換算してみれば、チーム打率は.322となり、リーグ覇者のソフトバンクを上回り、リーグ3位にまで跳ね上がる。 “耐球作戦”と言うなかれ。カウント別の打率を見れば、チーム初球打率は.338と甘いボールは見逃さず。ファーストストライクの打率も.328と高い。2ストライクとなれば.176と、やはり率は下がるもののフルカウント打率は.229と上がり、全491四球の半数以上の260四球を選ぶなど“好球必打”の姿勢は数字が物語っている。 さらに選手別の四球数を見れば、25本塁打を放ったマーティンが、チーム最多70四球。相手バッテリーの“警戒”を象徴する結果となっているが、高卒3年目ながら四番に定着しつつあった安田尚憲が6本塁打と長打力に欠けながらも62四球、下位打線やクリーンアップと複数打順を担った井上晴哉が59四球と、多くを選んだ。【表2】の打順別の四球数を見ても、二~四番の四球数が多く、選球の意識が低打率を補い、“つなぎ”の意識で、より得点につながる働きを果たした。 粘って四球でつなぎ、好機を拡大した20年のロッテ打線。走者なし=.229、走者あり=.242と、走者を置いた際に打力が向上と、四球で作った好機をモノにし、得点力は他球団に引けをとらなかった。