「痛い 熱い 苦しい」「凄まじい」実際に体験した人が語る熊スプレーの威力。熊対策で不幸な事態を回避するためのテクニック
クマスプレーの使用上の注意
ここからはクマスプレーを使用する際の注意点を私の経験を含めていくつかお話していきたいと思います。 ①クマスプレーの装備位置と安全装置の取り外しについて クマスプレーを購入したら、まずは安全装置(セキュリティストッパー)を固定している結束バントを必ず事前に切っておきます。切っておかないといざというときに使用出来ません。 装備位置について、クマスプレーはバッグの中に入れず、すぐに取り出せる位置に装備をしておき、なおかつ速やかに安全装置を外し、構える訓練をしておきます。 私なりにどこに装備するのがいいか色々と試した結果、胸元か腰に装備するのがベストだという結論にたどりつきました。今はその他の装備品の位置なども考えて、腰回りに装備して釣行をしています。 私はヒグマと遭遇したとき、恐怖心から手が震えてクマスプレーの安全装置をうまく取り外せないことがありました。日頃から訓練していても、緊急時には気が動転して思い通りの動作が出来ない場合もあります。あらかじめ、念入りに動作確認やイメージトレーニングをすることの重要性を痛感しました。 ②噴射時に気を付けること 片手だと噴射するときに噴射圧で的がずれるので両手で噴射するのが基本的な構えだと考えています。そして、風によって噴射距離が変わるのはもちろん、風上にヒグマがいる状況でやむを得ず噴射する場合、自分もスプレーを浴びてしまう可能性があります。そうなると自分へのダメージも避けられないので注意が必要です。 状況を考慮する余裕がなく使用する場合は偏光グラスやフェイスマスクで素肌を露出していない状態なら、スプレーを浴びてしまっても被害を最小限に抑えられるということも学びました。 ③噴射する時のヒグマとの距離 クマスプレー到達距離は、製品によって仕様が異なるので事前に確認するようにしています。私の使用している「熊よけスプレーCA230 カウンターアソールト」の製品の公式ページを参照にすると「勢いよく約9.6m、7秒間噴射」と書かれています。 この数字は無風状態の室内でテストした結果であり、フィールドで使用する場合は気温や湿度、風向きにより変化するのであくまでもこの数字は目安です。そんなに至近距離で、たった7秒なの? と驚く方が多いと思います。私の経験したお話ですが、最も命の危険を感じながらクマスプレーを構えた距離感は「ブラフチャージ」を受けた時です。 「ブラフチャージ」とは「威嚇突進行動」というもので、ヒグマが何度もダッシュで接近し至近距離で立ち止まり威嚇を繰り返す行動で、人間側が死を意識するような恐怖を感じるヒグマの行動です。 そんな緊迫した状況で、ヒグマの顔面、鼻目掛けて噴射出来るであろう距離まで耐えながら「何もしないよ、大丈夫、お願い」とヒグマに声を掛けながらスプレーを構え続けました。このときは、幸いにも噴射することなくヒグマの方から去って行き助かりました。クマスプレーを構えることによって、慌てず冷静に対応出来た事が命を守ることに繋がったと思っています。