地球で「生命が誕生した」3つのシナリオ…じつは、そのどれもが「海と切っても切り離せなかった」
深海の熱水噴出孔にすむ初期生命
海底には中央海嶺とよばれる大山脈が広がり、そこではマグマが現在もつくられています。マグマが冷え固まっても、熱を持った岩石が海水と反応することで、熱水には岩石中のいろいろな成分が溶け込みます。 中央海嶺付近の海底では、そのような熱水がところどころ海底から湧き出している熱水噴出孔がみられます(写真「熱水噴出孔」)。 その水深は2000mくらいで、光のまったく届かない深海の暗闇のなかなのですが、熱水噴出孔の周りには驚くほど多くの生物が生息しています。小さな微生物から、エビやカニ、イソギンチャク、チューブワームなど多様な、そして独特な生態系が熱水噴出孔の周辺に確認され、新種の生物も次々とみつかっています。
これらの生命は何を栄養としているのか
光の届かない深海で、これらの生命は何を栄養としているのでしょうか。 熱水には硫化水素やメタンなど還元的な物質が含まれ、深海の生命はそれらの物質を酸化するときに生じる化学エネルギーを利用しています。深海にいるメタン菌や鉄酸化細菌などは、化学反応から有機物をつくる独立栄養微生物です。 また、熱水噴出孔にいるエビやチューブワームなどは、それら生態系の一次生産者を食べたり飼ったりしてエネルギーを獲得しているのです。 熱水噴出孔にいる一次生産者の独立栄養微生物のなかには、超好熱アーキア(古細菌)もみつかっています。超好熱性のアーキアは生命の系統樹の根っこにいることも、生命が海底の熱水噴出孔で誕生した可能性を後押ししています。 原始の地球で、マグマオーシャンが冷え固まって海ができはじめた頃、海底のマグマ活動は今とは比べ物にならないくらい活発だったと考えられます。そのような時代には、海底のあちこちで熱水噴出孔から熱水が湧き出ていたことでしょう。熱水噴出孔から水素や二酸化炭素が常に供給され、鉱物表面や金属元素を触媒として有機物の合成が進み、なかには高分子など複雑化していったものもあるかもしれません。 生命の材料がそろった環境で、熱水からは硫化水素やメタンなどの還元的な物質が絶え間なく届き、原始的な化学合成生物の誕生にとっては格好の環境だったといえます。 しかし、生命が深海の熱水噴出孔で誕生したという説には一つ大きな問題点があります。 それは、有機物が合体して複雑化していくには水が邪魔になるのです。アミノ酸が合体してタンパク質をつくるのは脱水反応であって、反応により水分子を吐き出す必要があります。そのため、有機物の化学進化は水の中では起きにくく、乾燥状態が必要だと考えられるのです。 そこで登場するのが、次の陸上温泉説です。
【関連記事】
- 【続きを読む】あたりまえにしている「酸素呼吸」…じつは、地球に「海」がなければ「あり得なかった」
- 【シリーズ第1回】それでも、この「地球」を「水の惑星」と言えますか…じつは、地球全体の質量のうち「水は、たったの0.02%しかない」という衝撃の事実
- 【深海熱水説なら、こちらも】「99:1」か、「それ以下」か…2種類の炭素の比率を調べたら、なんと、35億年どころか、さらに古い「生命の痕跡」が次々と見つかった
- 【陸上温泉説なら、こちらも】なんと、深海の熱水孔より「高温の熱水を噴き出すスポット」が陸上にあった…「生命誕生は陸上」説で生じる謎と「うまい具合のシナリオ」
- 驚愕の事実…なんと、地球から「海が消える」。しかも、「予想を超えるスピード」で