500万円超のプジョーという選択肢はアリなのか? ドイツ車では得られない独創性
ミドルクラスの輸入車といえば、大半をドイツ車が占める。が、フランス車も侮れない! プジョー「508」という選択について今尾直樹が考えた。 【写真を見る】507万6000円のプジョー508の詳細(23枚)
ブリリアントなアイディア
2019年春からデリバリーが始まったプジョーの旗艦、508にあらためて試乗した。やっぱりいいなぁ。と、あらためて思った。 なにがいいって、プジョー回帰、フランス車回帰をはっきり示している。ドイツでもイタリアでもイギリスでもアメリカでも韓国、中国、もちろん、わがニッポンにもできない、フランスならではの、プジョーだけのプジョーがココにある。 エクステリアは1968年発表の「504」、翌年の「504クーペ」をちょっと思わせる。504はヨーロッパで1983年までに300万台が生産されたプジョーのアイコンといってよい中型サルーン、もしくはワゴンで、ピックアップのトラックもつくられた。耐久性は折り紙付きで、アフリカの悪路もなんのその、ケニアやナイジェリアでは2000年代までノックダウン生産されている。 といって、現行508のデザインが504そっくりというわけではない。四角いシルエットと、四角い4灯ヘッドライトが504クーペにちょっと似ているだけだ。でも、504を知る自動車マニアはそれだけでうれしい。504を知らないひとに、筆者のように知ったかぶりすることもできる。 個人的には、最近のプジョーのアイデンティティであるライオンのキバを思わせるLEDのライトがブリリアントなアイディアだと思う。ひと目でプジョーだとわかるし、アフリカの仮面のようでもある。中嶋らもの小説『ガダラの豚』に出てくる呪術的なパワーさえ感じる。 セダン受難の時代ということもあって、508はあえてリアにゲートを設け、5ドアのファストバック・スタイルを取り入れている。広いカーゴ・ルームの使い勝手を広げ、多機能性を持たせることにもなる。1980年代のルノー「25」とか、その前の「30」とか「20」、もっとさかのぼると「16」とか、プジョーのライバル・メーカーが好んだ手法だ。それもグループPSAを2014年から率いているカルロス・タバレスが1981年にルノーに入社したエンジニアだったことを思い出せば、驚くにはあたらないのではあるまいか。