軟式出身の右腕がかける思い、敦賀気比の大黒柱が初戦突破誓う
北信越地区の代表校としてセンバツに出場することが決まっている敦賀気比(福井)。6日より徳島県阿南市を活動拠点にしてセンバツ直前の合宿を開始し、最終調整を進めている。 【ギャラリー】敦賀気比のセンバツ直前阿南合宿の模様 今年の敦賀気比で注目されるのは、エースで4番、そして主将を務める上加世田 頼希投手(3年)だ。中学時代は軟式U-15代表にも選出された逸材で、その実力の真価は、これまで2度の甲子園の舞台で既に証明されている。2022年のセンバツを盛り上げるスター候補生の1人として大きな期待を寄せられている。 上加世田同様に、軟式U-15を経験した2019年のメンバーでは、敦賀気比のチームメイト・渡辺 優斗捕手(3年)や、浦和学院の二刀流・金田 優太内野手(3年)の2人がいる。上加世田は「(金田について)特に意識せずに、互いに勝っていい報告ができればと思っています」と、日の丸を背負った仲間には、深い思い入れを持ち込まなかったが、軟式出身であることには、上加世田なりの思いがあった。 「全国の小中学生に、軟式出身でも活躍ができることを伝えたいと思っています。当時から地元の仲間は硬式に行くことが多かったですし、今も硬式をやることが主流だと感じています。けど自分は『高校では投手で活躍するんだ』と決めたから軟式を選んで、今の結果があります。だから、センバツで活躍を通じて『投手は軟式3年間で体づくりをしても、硬式で活躍できる』ことを伝えたいと思っています」 実際プロ野球の世界を見ても、最近は中学時代、軟式だった投手が一流選手になるケースは多い。上加世田も、その情報を知ったことで「軟式でもいいんだ」と後押しされた部分があったという。 そしてもう1つ、上加世田がセンバツにかける強い思いのきっかけになっていることがあった。 「中学時代に2回ほど、森木 大智さん(現阪神)と対戦したんですが、森木さんに出会って野球人生が変わったといっても過言ではないと思っています。初めて対戦した時の自分は、漠然した目標しかなかったんですが、森木さんの野球の取り組み方や考え方を知って憧れたんです。それからは森木さんを目指してやってきたので、今の自分があるのは、森木さんとの出会いがあったからだと思います」 現在でも連絡を取り合う間柄で、「センバツで活躍したら、報告したいと思います」と笑顔で話しているのが印象的だった。 憧れの森木に近づくためにもセンバツで優勝をしたいところ。そのために長い冬を越え「チームは2段階くらい良くなったと思います」と大きく成長したことを認めながらも、「もっと上を目指せるはずなので、満足はないです」と現状に納得せずに、初戦まで成長を止めないつもりだ。 今回、初戦の対戦相手となる広陵(広島)に関して「中軸の前でにチャンスを作って、得点している印象が強い」と分析。そのうえで、「全力プレーを目指せば勝利に近づく」と話している。 大阪桐蔭(大阪)へリベンジするという思いもあるが、広陵から勝利することができれば、東哲平監督にとっても節目の甲子園20勝となる。チームにとっては大きな意味を持つ1勝だからこそ、何が何でも勝利をつかみたい。 軟式で頑張る小中学生のため、そして東監督の節目の記録を達成するため、大黒柱・上加世田が大車輪の活躍をみせる。