『天気の子』からも学べ─英「映画を観る限り、2021年はより最悪な1年になるかもしれない」
社会の分断、民主主義の後退、経済格差の深刻化、人口爆発、核開発をめぐる不安、異常気象に大気汚染、そしてパンデミック……20世紀が幕を開けてから、世界は終末を迎えるのではないかと心配になるような問題が常に起きている。なかでも2020年は散々な1年で、良いニュースを挙げることの方が難しいほどだろう。 では、2021年はどうなるのだろうか。誰もが状況の好転を願ってやまないはずだが、英「ガーディアン」に記事を寄せた映画評論家によれば、映画の世界では実現してもおかしくない「最悪な2021年」が描かれた作品もあるという。 過去に2021年を描いたクリエイターたちは、どんな未来を予想したのだろうか。彼らの作品からどういったことが学べるのだろうか。前出の「ガーディアン」から一部抜粋しながら紹介しよう。 この先12ヵ月がより良いものに願いつつ、映画を観ながらまだ見ぬ脅威に備えておくべきかもしれない。
危機:気候変動
『天気の子』(2019年) 東京に暮らす主人公の帆高は、2021年、自分の身を犠牲にすることで天気をコントロールする「晴れ女」の陽菜に出会う。だが「有限の天然資源」である彼女は、力を途中で使い切ってしまうのだ。そして雨を止めるため、空を漂うしかなくなる。 2019年に公開されたこの映画だが、「日本アニメーション界の巨匠である新海誠は、幻想的に描かれた環境保護論を、わずか2年先の世界を通して語る」。 「未来に起きることだと思っていた事態は今まさに起きており、そして監督が脚本で提起する問題は、すでに現時点で重要な問題であることを示唆している──すなわち、地球温暖化、水位の上昇、そして避けがたい惑星の溺死という、十分な根拠に基づく懸念だ」 「陽菜が地球に戻ることで海が日本の大部分を飲み込むという予想外な結末は、むしろその方がいいのではないかと観客に提案する」 「私たちはあまりにも長い間、無謀な生き方をしてきた。その報いを受けるとするなら、私たちにできるのは自ら招いた運命を受け入れ、そのなかで平和を見つけようとすることなのかもしれない」 ■気候変動を考える ・2020年、世界の大気汚染レベルはパンデミック前を凌駕する酷さだった ・史上最大の北極調査団に激震「海氷が足元から音を立てて崩れていく…」 ・中国政府が本気で取り組む「新気象制御計画」はなぜ恐ろしいのか ・地球温暖化がなければ、世界の貧富の差はいまよりずっとずっと小さかった