静岡県知事、国策リニア計画にもの申す 川勝平太
編集部からリニア中央新幹線(以下、リニア)に関して見解を問われました。リニアとは長い付き合いがあり、整備に賛成してきました。一方、本県の“命の水”を確保し、大井川に生活・生業を全面依存している「流域県民」を守り、大井川の源泉「南アルプス」は保全しなければなりません。各種メディアとの間で類似の問答を済ませていますが、以下ではそれらをしました。
国策との関わり
私と国策との関わりは、さかのぼれば、阪神・淡路大震災の国の対応にもの申したのがきっかけです。震災は天災ですが、京浜・中京・阪神工業地帯(太平洋ベルト)の国土づくりは国策でした。神戸への人口集中は国策の帰結ですから、神戸の被害が大きくなったのは人災です。 禍を福に転じるため、神戸市と兵庫県の人口比一対四が首都圏と日本全国の人口比であることに照らし、神戸への一極集中を是正し、兵庫県の内陸部を活性化するために、県庁を内陸(たとえば丹波篠山市)に移すことで、均衡ある国土づくりの地域モデルとすべきである、と主張しました。その論文が国土計画のドンの故・下河辺淳氏の目に留まり、国土審議会への参画を求められました(拙稿「富国有徳の日本─六甲の裏山に森の町を」『論座』二号、一九九五年五月。『富国有徳論』中公文庫、二〇〇〇年所収「提言2」に再録)。 私の国土論は、国会等移転審議会の報告を尊重し、首都機能移転の筆頭候補地・那須野が原(栃木県)に首都を移し、あわせて、(1)景観、(2)人口、(3)経済力の三基準によって、森の洲(北海道・東北)、野の洲(関東)、山の洲(中部)、海の洲(西日本)、島の洲(沖縄)の五地域に分けよというものです(拙稿「東京時代と決別する─四つの地域と沖縄に分国する」、『「美の文明」をつくる』ちくま新書、二〇〇二年所収)。東京集中の是正と国土の分散化の主張です。 橋本内閣のときに国土審議会に招かれて以来、二〇年余り委員を務めました。戦後五度目の「21世紀の国土のグランドデザイン」策定に参画して「日本ガーデン・アイランズ」構想を提唱し、リニアが開く「スーパー・メガ・リージョン(京浜・中京・阪神の七〇〇〇万人巨大都市圏)」構想をうたう「国土形成計画」の策定にも加わりました。