佐藤可士和さんにインパクトを与えた3冊。3歳の頃に読んだディック・ブルーナ絵本がグラフィックデザインの原体験
誰しも人生の傍に本の存在があるのではないでしょうか。 時に新しい扉を開き、背中を押し、心を癒してくれることも。素敵に年齢を重ねる13人の方々の〝かけがえのない本〟を聞いてみました。 【画像一覧を見る】
グラフィックデザインの原体験をもたらした絵本。
「もっと知りたいと感じたものに出会うと、僕はその関連書籍をザッピング的に選んで読んでいます。それが今の読書」 佐藤可士和さんが読む本は、ビジネス書から専門書まで、ジャンルもさまざま。では記憶にある本との出合いとは。 「僕は絵ばかり描いている子供で、絵本も大好きでした。ディック・ブルーナのうさこちゃん(シリーズ)は、ブックデザインや色の使い方が他の本とはまったく違い子供心に衝撃を受けました。そしたら両親がこれはシンプルな線で描かれ、色数も少ないユニークな本なのだと説明してくれたことをすごく覚えています」 ブルーナの本は形が正方形。見開きの片側がドローイングで、もう一方が白地にタイポグラフィーというフォーマット。 「子供心にこの本をかっこいいと思い、大学生になってブルーナさんがグラフィックデザイナーと知るわけです。あれがグラフィックデザインの原体験でした」
サイバーパンクの世界が、デジタル×デザインへと誘った。
大学生の時に読んだ『ニューロマンサー』は、デジタルへの扉を開けた本。 「美大生の間でかっこいいと話題でした。なかなか読みづらかったんですが“電脳空間”や”ジャックイン”など、想像できない“向こう側の世界”を知って、コンピューターへの概念が変わりました」 その影響から可士和さんは博報堂に入社早々マッキントッシュを購入し、デジタル入稿でポスターを作った先駆者になったのです。
グローバル化が分断された今、必要な俯瞰力を教えてくれる。
そして妻の悦子さんから「おもしろかった」と勧められ、今現在も可士和さんに影響を与え続けている本があります。 「2018年の貿易摩擦に始まる米中の経済対立以降、グローバル化と言われていた社会が分断されてきた。でもホーキング博士の『ビッグ・クエスチョン』を読み、この中に“宇宙から地球を見るとき、私たちはひとつの全体に見える。私たちはひとつに結ばれていて、個々ばらばらに存在しているのではないことを目の当たりにするのだ”とありました。やはり視点を大きく持つことが大事。これから考えるべき全人類の課題でしょうね」