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ローカル鉄道40社を訪ねる「鉄印帳」が大ヒット 「集めたい」心を捉える仕掛け

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ITmedia ビジネスオンライン

あらゆる趣味は「採集」「狩猟」「栽培」で成り立つ

 人類に限らず、動物が生きていくためには食べる必要がある。常に食べ物を獲得したい。その方法は主に、果実などを集める「採集」と、魚や動物を獲る「狩猟」だ。自然任せでは食べ物を得られないときもある。だから採集と狩猟の延長に保存や貯蓄があり、計画的に食料を得るための「栽培」が始まる。農耕や養殖だ。つまり、人類にとって「採集」「狩猟」「栽培」は食べ物を獲得する本能といえる。  ところが、物々交換から貨幣経済が始まると、「採集」「狩猟」「栽培」をしなくても食べ物を獲得できるようになった。集団生活を始めると役割分担ができる。歴史を俯瞰すれば、商人、領主、殿様といった立場ができて、彼らは自ら食べ物を獲得しなくても生きていける。しかし、人間としての「採集」「狩猟」「栽培」の本能は残っている。その意欲を発散させたい。そこで本能の代償行為として「趣味」が生まれた。  コレクション趣味は「採集」本能を満足させる。釣りやハンティングは「狩猟」そのものだ。獲物を獲得する行為と「写真撮影」も似ている。シャッターを押す行為を「ショット」という。狩猟用語である。「栽培」は「作る趣味、育てる趣味」全般に相当する。  鉄道趣味で言えば、鉄印帳のほか、きっぷや駅弁の掛け紙集め、スタンプ集めは「採集」である。撮り鉄は「狩猟」、鉄道模型作りは「栽培」だ。では私のような「乗り鉄」はどこに分類されるかといえば「採集」だと思う。行ったことがない路線に乗りたい。違う季節の車窓を見たい。乗った路線を地図で塗りつぶしたい。博物館巡りにも似ている。採集対象はモノだけではない。これはいわば「経験・体験」のコレクションだ。  ゲームも同様だ。アイテムを集め、敵を狙い撃ち、街を作る。ヒットするゲームのほとんどは、「採集」「狩猟」「栽培」のそれぞれの本能を刺激する。集めると楽しい。狩ると楽しい。育てると楽しい。そして2つの要素を組み合わせると熱中度が高まる。古い例えだけど『シムシティ』は街を栽培するゲームとして大ヒットした。シューティングゲームは言うに及ばず。『Age of Empires』や『StarCraft』は資源を集め、拠点を作り、敵を狩るという3要素が全て入っている。  スタンプラリーや鉄印帳も複合要素がある。「採集」に加えて、獲りに行く「狩猟」要素があるから魅力度が上がる。撮り鉄も「ある鉄道会社の車両全形式を撮りたい」となれば「採集」要素が加わる。模型鉄は車両を「採集」し、ジオラマを「栽培」する。これらは人間の本能の代償行為だ。  趣味分野で新しい商品やサービスを考えるとき「採集」「狩猟」「栽培」の要素は重要だ。3要素のどれもない、あっても希薄だと人は本能を刺激されない。つまり売れない。  しかし、鉄印帳のように、どれか1つを追求し、2つ以上の要素を組み合わせれば楽しさは増す。これが趣味ビジネスのアイデアの基本だ。ここに実行力のあるヒト・モノ・カネがそろって事業が成立する。  「Go To トラベルキャンペーン」は派手に展開しているけれど、値引きしか訴求していない。これだけではヒトは動かない。一方、鉄印帳は値引き策がなくても人を旅に向かわせる。いまのところ、Go To トラベルキャンペーンを活用して鉄印帳を集めに行く旅が正解といえそうだ。しかし、キャンペーンが終わっても、鉄印帳の旅は人々をひきつけるだろう。値引きに頼らず、趣味の本質を見据えたサービスが成功の鍵といえそうだ。 (杉山淳一)

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