「希望退職を希望」 会社は危機でないが日常化した退職ラン=韓国(1)
「今年は希望退職の時期というものがなかった」。希望退職は年末にするという固定観念が今年は完全に崩れた。一年中、各社の希望退職計画が続いた。業種も多様だった。さらに1年間に2回実施する企業もあり、社員級にまで対象者を拡大した企業もあった。大企業は「希望退職は業績不振の象徴ではない」と強調する。「最近の希望退職は深刻に受け止めることではない。国際通貨基金(IMF)当時の名誉退職とは違う」という主張もある。本当にそうなのか。希望退職と書いて「よい解雇」と読むのはタブーではなかったのか。 ◆年に2回…日常化した希望退職 今年の流通業界では大企業が毎月のように希望退職計画を発表し、年中、希望退職の話が絶えなかった。昨年、会社創業以来初めて年間赤字(-469億ウォン)を出したイーマートは今月、今年2回目の希望退職受け付けを行った。3月に創社以来初めて全社レベルで希望退職を受け付けてから9カ月ぶりだ。対象は「15年以上」勤続職員であり「10年以上」勤続職員から大幅に拡大した。流通界の希望退職はオン・オフラインを問わない。11番街(3月)、ロッテオン(6月)、SSGドットコム(7月)、ロッテ免税店(8月)、Gマーケット(9月)、セブンイレブン(10月)、ロッテホテル・新世界免税店(11月)まで次々と続いた。ロッテオンは希望退職を年2回実施している。 中国と競争する製造業も希望退職を実施した。LGディスプレイは6月に生産職群の希望退職を実施したのに続き、11月には事務職群で進めた。SKオンは2021年にスタートして以降初めて9月に希望退職を受け付けた。無給休職をすれば月給の代わりに学費を支給するプログラムも提供し、職員の間で反応が良かった。若いエンジニアなど人材を逃せない状況で短期的な費用を減らすための案だ。 少なくない希望退職金が「退職ラン(run)」を呼んだりもする。12年ぶりに大規模な希望退職を実施したNCソフトは、勤続期間別に最大で30カ月分の月給の慰労金を支給した。慰労金が最大3億ウォン(約3200万円)と発表されると、他社の職員はうらやましく感じたという。希望退職申請後に会社の承認を受けて退職が確定した職員は400人を超えるという。 11月に発刊された『希望退職マニュアル:準備から成功まで』によると、2021年から昨年まで「希望退職」関連の記事数は年間多くて1400件ほどだったが、今年は7月にすでに関連記事が1600件を超えた。著者であるピープルグロスコンサルティングのオ・ソンホ代表は「年に2回の希望退職は異例」と話した。 ◆不振の象徴でない? なぜ増えるのか 希望退職の直接的な理由は企業の業績不振だ。人件費の負担を減らすということだ。ところが専門家らは希望退職が増える理由をもう一つ挙げる。技術発展ペースが速くなったことで、企業には以前とは異なる力を持つ新しい人材が必要となり、構造調整の需要が生じるという分析だ。延世大のイ・ジマン経営学科教授は「企業は胎生的に『人材新陳代謝』を追求するしかなく、今後も法の枠内で希望退職を最大限に活用しようとするだろう」と話した。 「一生同じ職場」という概念が薄れて入社と退社が頻繁になった雇用構造の変化も原因に挙げられる。この数年間に随時・経歴採用が一般化し、現在5大グループではサムスンだけが唯一グループ新入公開採用を維持している。大企業は今後、希望退職がさらに拡大するとみている。匿名を求めた大企業の人事担当者は「解雇が難しい韓国社会で希望退職は企業の最後のオプション」とし「転職に対する拒否感が強くないMZ世代を中心に職員が希望退職を先に要求するケースも増えている」と話した。 希望者を対象に「常時退職」支援プログラムを運営する企業も次々と登場している。50代の職員を対象に早期退職後の再就職教育を支援するところもある。10大グループのある人事担当者は「常時退職プログラムは人為的な人員削減でなく自律的な退職をサポートするという趣旨」とし「第2の人生を準備できるよう会社レベルでコンサルティングを支援している」と説明した。