日銀・黒田総裁会見6月20日(全文1)日本の景気は緩やかに拡大
2%の物価安定目標は維持しているのか
日本経済新聞:ありがとうございます。2つ目お願いいたします。2%の物価安定目標についてお尋ねしますが、先日の国会で安倍総理は、もうすでに完全雇用を目指すという意味においては、もう金融政策も目標を達成しているという答弁をされていて、その前も、麻生大臣が2%の目標にこだわる必要はないという趣旨の発言をしておられます。こうした発言からみると、政府側の2%の目標達成に向けた意思っていうのが薄れているようにも感じられるんですが、日銀としてこの達成、実現に時間が掛かる下で、この目標の実質的な位置付けというのに変化がないのかどうか、あらためてご見解をお願いいたします。 黒田:この2%の物価安定の目標、これは2013年1月に日銀の政策委員会で決定した目標ですけれども、これは第1に統計上のバイアス、それから第2に政策対応力の確保などを検討し、考慮した上で、第3に、今や2%の物価安定の目標っていうのはグローバルスタンダードになってますので、それを目指すことが長い目で見た為替レートの安定にも資するといったようなことから、先ほど申し上げたように日本銀行政策委員会が自ら決定したものであります。物価の安定という日本銀行の使命を果たすためには、その実現を目指すことが必要と考えていることに変わりはありません。 もちろん日本銀行も、これまで何度も申し上げてきたとおり、単に物価だけが上がれば良いと考えているわけではありません。企業収益や雇用の改善、賃金の増加とともに、物価上昇率が緩やかに高まっていくという好循環が続いていく状況をつくりだすということが、物価安定の下での持続的な成長にとって重要というふうに認識をしております。 こうした認識の下、日本銀行としては、引き続き現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適当であるというふうに考えております。
追加緩和に対する耐性は低下しているのでは?
日本経済新聞:最後にもう1問、お願いします。追加緩和の手段についてですが、FRBによる利下げの観測も広がる中で、本日、日本の長期金利はマイナス【0.17% 00:11:09】まで一時、下がり、そして為替も107円台半ばまで円高が進んでおります。 こうした中で日銀として取りうる追加緩和についてなんですが、大規模緩和の導入から6年以上がたって、金融機関の体力も低下している中、新たな追加の措置に対する耐性っていうのは低下しているようにも思えるんですが、コストに照らしてベネフィットが大きい、そういう手段の余地っていうのは限られているようにも見受けられるんですが、その辺りのご見解をあらためてお願いいたします。 黒田:もちろん日本銀行は従来から政策の効果とともに、金融仲介機能とか、あるいは市場機能に及ぼす影響などにも考慮しながら金融政策を運営してきております。こうした点に関して現状、ご承知のように金融機関は充実した資本基盤を備えておりますし、現時点では低金利環境の継続によって、金融仲介機能が停滞方向に向かうといったリスクは大きくないというふうに判断しております。 また、国債や株式市場の機能度も、全体として維持されているというふうに考えておりまして、その一方で現在の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みっていうものは、この名目金利から予想物価上昇率を差し引いた、いわゆる実質金利を引き下げることによって、経済活動の改善に大きく寄与しているというふうに考えております。 日本銀行はこれまでも政策のベネフィットとコストを比較、考慮しながら、適切に対応してきておりますし、これからもそういった対応は可能であるというふうに考えております。この点は仮に将来2%に向けたモメンタムが損なわれて、追加緩和を検討するような場合も同様でありまして、これまで申し上げてきたとおり、追加緩和の手段としては短期政策金利の引き下げ、長期金利目標の引き下げ、資産買い入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速など、さまざまな対応が考えられますけれども、日本銀行としてはこれらを組み合わせて対応していくことも含めて、その時々の状況に応じて適切な方法を検討していくということに変わりはありません。 日本経済新聞:ありがとうございます。幹事社からは以上です。各社、お願いします。