風間杜夫ら出演「セールスマンの死」開幕、長塚圭史「考え得る最良のものをお届けします」
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「セールスマンの死」が、1月8日に神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 ホールで開幕した。 【写真】KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「セールスマンの死」より。(撮影:細野晋司)(他5件) アーサー・ミラーの代表作の1つである「セールスマンの死」は、主人公ウィリー・ローマンが死に至るまでの最期の2日間を描いた作品。同劇場のプロデュース、長塚圭史の演出により2018年に上演され、今回はその再演となる。2018年版に続き、風間杜夫、片平なぎさ、山内圭哉、菅原永二、加藤啓、智順、大谷亮介、村田雄浩が出演するほか、土屋佑壱、山本圭祐、佐野瑞稀、浜崎香帆が新たにキャスティングされた。 開幕に際し、長塚は「再演により『セールスマンの死』をより深めることができて、シンプルに幸せを感じています」と心境を述べつつ、「こういう状況下でも、劇場の門戸を開いていられるというのは大きなことです。世界が激変した昨年の2月から、各劇場が感染症対策を必死に積み上げてきた財産だと思います。また一方で、いつも通りに劇場に来られないお客様に何を発信できるのか引き続き問われています。視界を広げるチャンスと思い、考え得る最良のものをお届けします」と決意を語る。 主人公のウィリー役を演じる風間は「1950年頃の資本主義社会が発達するアメリカにおいて『稼げない人間はダメだ』という価値観の中で彼の悲劇が生まれますが、コロナ禍で分断や差別というものがさらに際立ったこの時代、ウィリーが置かれている状況に近いものが現代にもあり、よりお客様に多くのものをお届けできるような気がします。ぜひご覧いただきたいと思っています」と観客にメッセージを送った。 上演時間は休憩ありの約3時間20分で、KAAT神奈川芸術劇場公演は1月12日まで。その後、21日に岩手・岩手県民会館 大ホール、30日に長野・まつもと市民芸術館 主ホールで上演される。なお16日に予定されていた神奈川・厚木市文化会館 大ホール公演は、緊急事態宣言発令による厚木市内公共施設の休館に伴い、中止となった。 ■ 長塚圭史コメント 再演により「セールスマンの死」をより深めることができて、シンプルに幸せを感じています。 この作品はもちろん優れた家族劇でもあるのですが、資本主義の矛盾を抱えながらもその閉塞感の中で生きるウィリー・ローマンの悲劇を描いた社会劇としての魅力が際立ちます。 感染症が世界中で猛威を奮う現在、2年前の初演とは随分響き方が変わったのではないでしょうか。 70年前の戯曲が、現在に呼応し続けるというのはすごいことです。物語が現実と過去と幻想が混じり合う非常にモダンなつくりになっていることも含めて、改めて強靭な戯曲です。 こういう状況下でも、劇場の門戸を開いていられるというのは大きなことです。世界が激変した昨年の2月から、各劇場が感染症対策を必死に積み上げてきた財産だと思います。また一方で、いつも通りに劇場に来られないお客様に何を発信できるのか引き続き問われています。視界を広げるチャンスと思い、考え得る最良のものをお届けします。 ■ 風間杜夫コメント 初日が良い形で迎えられてほっとしています。 今回の再演では、現実と過去の記憶や妄想などが混在して進行していく物語の中で、ウィリー・ローマンのある種の困惑のタッチを意識的に強く出そうと、稽古の時から考えていました。 何でもネットで購入できる世の中で、人が人に会ってモノを売るというセールスマンという仕事も、人々の記憶から忘れ去られていく職業になっていくかもしれません。1950年頃の資本主義社会が発達するアメリカにおいて「稼げない人間はダメだ」という価値観の中で彼の悲劇が生まれますが、コロナ禍で分断や差別というものがさらに際立ったこの時代、ウィリーが置かれている状況に近いものが現代にもあり、よりお客様に多くのものをお届けできるような気がします。ぜひご覧いただきたいと思っています。 ■ KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「セールスマンの死」 2021年1月8日(金)~12日(火) 神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 ホール 2021年1月16日(土) 神奈川県 厚木市文化会館 大ホール 2021年1月21日(木) 岩手県 岩手県民会館 大ホール 2021年1月30日(土) 長野県 まつもと市民芸術館 主ホール 作:アーサー・ミラー 翻訳:徐賀世子 演出:長塚圭史 出演:風間杜夫、片平なぎさ、山内圭哉、菅原永二、加藤啓、土屋佑壱、智順、山本圭祐、佐野瑞稀、浜崎香帆、大谷亮介、村田雄浩 ※厚木市文化会館 大ホール公演は、緊急事態宣言発令による厚木市内公共施設の休館に伴い、中止になりました。