ちりめんじゃこ危機 シラス不漁 53年ぶり1000トン割る 温暖化で生息海域が北へ移動か、水揚げゼロの漁協も 県内22年
2022年の鹿児島県内のシラス漁獲量(概数)は900トンで、1969年以来53年ぶりに1000トンを下回ったことが国の漁業・養殖業生産統計でわかった。21年の1830トンから半減した。全国的に減少しており、関係者は、温暖化による生息分布の変化や資源量の減少、競合種の増加などが要因とみている。 【写真】〈関連〉シラスの県内漁獲量の推移をグラフで確認する
シラスは主にカタクチイワシの稚魚を指す。県内では西薩海域と志布志湾海域を中心に江口(日置市)や志布志(志布志市)など9漁協かそれ以外の事業者を通じて出荷される。4~6月が最盛期で、大半はちりめんじゃこや釜揚げしらすに加工されてから、県内外の市場へ流通する。 県漁業協同組合連合会(県漁連)によると、西薩海域側の不漁が深刻で、今年4月以降、いまだに水揚げがない漁協もあるという。 県水産技術開発センター(指宿市)の調査では、西薩海域で取ったシラスを扱う川内、江口、羽島、加世田の4漁協では1999年の5450トンをピークに右肩下がりで2002、03年は1000トンを下回った。04年は3507トンと復調したが、05年以降再び下落し22年は168トン。 志布志湾海域で取る志布志、東串良の2漁協では07年から1000トン前後で増減を繰り返し、22年は308トン。両海域ともに22年は過去最低だった。ほかの3漁協も低調だ。
水産研究・教育機構水産資源研究所(長崎市)浮魚資源部の大下誠二副部長は不漁の背景として、海水温の上昇でシラスの生息分布が県内の漁場より北に移動していることや資源量の減少を挙げる。「志布志湾側では、直近2年で黒潮が大蛇行となり、漁場が離れてしまっている。同じプランクトンを食べる競合種のマイワシが回復傾向である点も要因に考えられる」と話す。
南日本新聞 | 鹿児島