首長が刑事告発されることも ニュースで耳にする「百条委員会」とは？
地方自治法「第100条」が根拠
百条委はどう設置され、どのような権限を持っているのだろうか。 「百条委員会」と呼ばれているのは地方自治法第100条に基づき地方議会が必要に応じて設置する特別委員会の通称だ。設置するには議員の過半数の賛成を得る「議決」が必要となる。 同条1項に「普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行い、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる」との条項がある。この権限は議会の「百条調査権」と呼ばれる。 なぜ議会にこのような調査権が与えられているのか。 狙いは、首長らの行政執行について不正行為などの疑惑や不適切な行いがあった場合、証人喚問など強制力のある手段を通じて真相を解明することだ。この調査権は事実解明の手段ではあるものの、警察のような捜査権まではなく、関係者を直接罰することはできない。ただ、偽証や隠ぺいがあったと判断される場合には地方議会が検察に刑事告発し、司法の判断で刑罰が科せられることはある。 ちなみに、百条委の調査に対して証人が虚偽の陳述を行った場合は5年以下の禁錮刑、正当な理由がなく出頭や証言などを拒否した場合は6か月以下の禁錮刑ないし10万円以下の罰金が科せられる。証言が二転三転した場合も、「偽証」の疑いを持たれ刑事告発の対象となる。
水戸黄門の“印籠”のイメージ
議会の持つ百条調査権は水戸黄門が、「この印籠が目に入らぬか！」と悪者に迫る、あの“印籠”のイメージに近いかもしれない。 強い権限が与えられているため、議会は百条委の設置をちらつかせ、首長らの活動を牽制しようという政治的思惑が働くこともままある。時には首長を“悪者”に仕立て上げてしまう恐れさえある。百条調査権の行使の前に議会が十分な事前調査を行っているか、公正な権限行使なのか、私たち自身が議会の行動を吟味（ぎんみ）し監視する必要がある。 この地方議会の百条調査権は、国会に与えられた国政調査権の自治体版とも言われ、市長、知事ら執行機関、その補助機関である職員の行動を統制する一番強力な権限と言える。 日本の地方の政治制度は2元代表制を採っている。議会に議決機関の役割を、首長に執行機関の役割を持たせ、双方の機関は抑制均衡を保ちながら原則独立の活動を行うよう求められている。 その議会には（1）政策や予算の決定者（2）予算の執行や事務事業の進め方の監視者（3）住民に代わって政策や条例を提案する提案者、（4）議会活動を知らせ住民から民意を集める集約者――という4つの役割がある。「百条調査権」は（2）の「監視者」の役割を強化するためにある。 百条委の調査対象は執行機関だけに限られているわけではない。例えば、千葉県市川市では2015年、市議が政務活動費で大量に切手を購入したという事案が発生し、百条委が設置された。
