「自分は、何をしたいんだ?」…”闇落ち”した経営者たちに「共通して」欠けているモノ
近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。 『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第61回 『「父は桃太郎というやつに殺されました」…童話から学ぶ「正義」が持つ意外な危うさとは』より続く
自主自律の精神
「自主自律」 この言葉は、多くの人が耳にしたことがあると思います。多くの学校で校訓、教育目標として掲げられているようです。 「他人や周りからの干渉や制約などを受けず、自発的に自分自身で考えて行動し、自分自身の規範に従って己を律すること。自主性や自律性を備えていること」と解釈されることが多いようです。 この「自分自身の規範に従って己を律すること」の部分が「自律」です。よく似た言葉に「自主自立」がありますが、こちらは「自主的であり、かつ、他人などの世話にはならずに自分の力だけで独り立ちしていること」と解釈されます。
起業家が持つべき精神
他人を巻き込み、周囲とともに動いていく起業家は「独り」ではありません。 自分自身を、自分の決めた規範で律することが必要です。Entrepreneurshipとは、人生を自分らしく生きるための羅針盤。だからこそ「倫理観」が欠かせないのです。 規範は自分自身が決めます。もしそこに「人を騙してもいいから、お金儲けを第一にしたい」という規範を設定すると、特殊詐欺師が生まれるかもしれません。「大衆を騙してもいいから、この国を牛耳ってやろう」ということが規範であると考えると、独裁者が生まれるかもしれません。 起業家は、夢を持っています。〇〇を実現したい、〇〇をなくしたい、世界を変えたい。そして行動し、人が集まり、お金も集まり、大きなうねりが生まれます。そして、夢に向かって進んでいく。そのとき、さまざまな分岐点があります。判断をしなければならないときが訪れます。その判断基準が何か。 このほうがお金が集まりやすい このほうが周囲の同意が得られやすい このほうが近道だ さまざまな判断基準があります。ここで重要なのは「そもそも何がしたいのか」です。近道でも、お金が集まりやすくても、もともとの目的に合致していない選択肢は選ぶべきではありません。それを選んだ段階から、当初の夢がぶれていくからです。 悩んだとき、どうするのかを考える、そんなときに役立つのが倫理です。さまざまな選択肢が目の前にあるとき、悩んだら、 そもそも、自分は何をしたいのか それは最初の夢に合致しているのか それをして、自分自身に対して、何も後ろめたさはないのか 家族に対して、胸を張って、自慢できることなのか この基準を外してはいけないのです。