調達する肉や卵、法令遵守できていますか?
1月21日、環境省と農林水産省が連名で通知「農場における産業動物の適切な方法による殺処分の実施について」を出した。畜産場では弱ったり、生産性を失ったりした動物を農場内で殺処分する必要がある。その際に動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)に違反した殺処分方法がとられていることが確認されたため、各自治体は指導を徹底し、指導に従わない場合は告発も視野に入れよ、というものだ。この通知は、肉や卵などを調達する企業にも関わりがある。
あらためて法令の周知が必要な日本の農場
世界的な動物福祉団体WAPは、日本の畜産動物の保護を最低ランク=Gランクと評価している[1]。これは主に法規制やその実効性の有無によって決定されている。つまり動物愛護法は世界的に見てとても緩いものという評価なのだ。 その緩めの法律を守ることができていない業界は、問題を抱えていると言える。2019年6月に動物愛護法が改正されたときには、畜産農業に対しては動物愛護法や基準の周知し、守るように措置を講ずるようにという付帯決議がつけられた。これは動物愛護法の罰則に畜産動物が含まれていることを知らない人が多く、虐待的な行為が多々見られるためだった。 この通知では、2つの事例が挙げられている。 ・首吊りにより時間をかけて、豚を窒息死させる行為 ・適切な治療や殺処分を行わずに放置することにより、鶏に餓死や衰弱死を招く行為 にわかに信じがたいような内容だろうが、事実として日本で起きていることだ。これら事例がごく一般的な大きめの農場で起きていることを付け足しておきたい。 他にも数々の驚くべき殺処分方法が取られている。生きたまま鶏を焼却炉に投げ込んで焼き殺していた養鶏場もあるほどだ。
国は動物虐待をなくしたい
昨年環境委員会で、小泉環境大臣は、堀越啓仁議員からの質問に対して「動物虐待は、人が社会の中で関わるあらゆる動物の取り扱いについて、法的にも、道義的にもあってはならないことであり、産業動物においてもなくしていかなければならないことだ」と答えた。 これまで畜産動物を虐待から守ることに関して、国の姿勢は曖昧にみえていた。しかし、法改正の議論を経て、また世論の盛り上がりを経て、国は畜産においても動物虐待を許さない姿勢を明確にした。これはこれまでの日本の動物愛護行政の中で、画期的な変化だといえる。 しかしこれですべて解決するわけではない。虐待は養鶏場、養豚場という外からは見えない場所で行われていることだからだ。立ち入りができる行政職員や産業獣医師が、なにが虐待かわからない、更にはなにが適正な殺処分方法かもわからない可能性が高いからだ。